青く、蒼すぎず、高くふかく

遊井そわ香

第1話 幸せの波及効果

ある機関で電話相談のボランティアをしたことがある。受話器に耳を押しつけ、全神経を集中しなければ聞き取れないほどに、彼女の声は小さかった。


「長年虐待を受けていたけれど、周囲の助けがあって、今は精神病院に通っています。今日初めて、働きたいと思ったんです。先生に反対されるかもしれないし、面接で落とされるかもしれない。でも、社会に出て働きたいと思った自分がすごく嬉しいんです」


働くことは簡単じゃない。職場が理解ある人たちばかりとは限らない。意地悪な人は世の中にたくさんいる。

だからこそ、願う。

世界が彼女に優しくありますように。

勇気を出して人生を歩む人に、人々が寛容でありますように。

水に投げた石が輪を描いて広がっていくように、世界に喜びが広がっていきますように。




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