概要
真っ赤な世界の中でドッグタグがかちゃりと音を立てる。あなたを捕まえた。
かつての想い人からの依頼。戦地に赴く彼に代わって、相棒のドッグタグを故郷の教会へ運ぶ役目。その帰り道、私は花咲く道で、うずくまる人にろうそくを手渡す。赤い花が脈打っていた、燃えていた。そんな伝承の道で私が求めたものとは……。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!外国の、短編映画を見たような読後感。
目の前に色のついた風景が広がる描写がとても素晴らしい作品で、コーヒーが香るようなレトロ雰囲気のダイナー、荒涼とした大地から山間部風景、荘厳な教会、白い霧の世界、赤い花畑。
1万文字少々の中にこれだけの風景が広がります。主人公の職場は忙しそうというところから都会の喧騒も感じ取れるかも。
ジャンルは「神秘的な、不可思議」の意味のミステリーですね。
主人公が久々に級友と会う所から物語はスタート。複雑な気持ちもある様子。
それぞれの体には識別チップが埋め込まれている未来の時代でも、やはり戦争というものは無くなっていないようで。
あえてドッグタグというアナログなアイテムを使っている彼ら…続きを読む - ★★★ Excellent!!!企画入賞レビュー「人はみな旅路の中にいる」
言うなれば臨場感が非常に高い紀行文学。すなわち、読めばあたかも本当の旅行へ出かけたかのように主人公が旅先で味わったものを追体験できる文学作品です。『土佐日記』や『更科日記』などが有名でしょうか。このジャンルの特徴として挙げられるのは、風景描写、心理描写への深いこだわりと、力の入れようが半端でない点です。
軍人である親友から預かったドッグタグ。それを故人の故郷にあるという「ステンドグラスが素敵な教会」へと持っていく。内容に触れるならただそれだけの話なのですが。
同じ軍人である彼の安否。彼への思いを織り交ぜた不安。田舎の豊かで情緒的な風景。そういったことを通じて「人生とは何か、旅行とは本来ど…続きを読む