命は絶対。何よりも重い。どこまでも誠実な熱さがある。

本当に素晴らしい作品でした。

私の精神の心奥のズドンと来ました。

一つの物語としての完成度、構成力、描写力などの高さは勿論。本作には冒頭からラストまで全くブレることのない信念を感じます。

命は絶対であり、何よりも重い。

その信念に基づいて突き進む主人公、エイダ・エーデルワイスを中心に据え、そんな当たり前すら忘れてしまった過酷な戦場を舞台に彼女が奔走する姿が描かれます。

そう、最初は命が大事と言ってはばからないのは作中世界ではエイダのみ。

次々とゴミのように命が消えていく戦場で、エイダ以外の人々は皆、そんな当たり前のことすら忘れ、気にかけることができない状況にあります。

しかしエイダはその当たり前を絶対に捨てない。
やがて世界の片隅でエイダだけが持っていた信念は伝播し、大きなうねりとなって物語世界全体へと伝わっていきます。


地獄のような戦場からそのうねりが伝播していくカタルシス。

エイダに触発され、各々の本来持っていた輝きを取り戻し、あるいはより一層輝かせる魅力的な登場人物の数々。

本作の魅力は上げたらきりがありませんが、最後に一つあげるとすれば、私は『誠実さ』を上げます。

命に対する誠実さ。医療というもの、応急手当という行いに対する誠実さ。

本作で扱うテーマに対して誠実に真摯に向き合った結果、輝きを放つ物語が産まれた。私はそのように強く感じました。


素晴らしいお話を読ませて頂きました。
ありがとうございました。

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