終わった後の恋物語


 葬る、というタイトルから悲しいお話を連想していました。

 けれど実際に読んでみると、この物語は悲しさや硬質な冷たさを残さず、切なさや、そこにあったはずの温度を感じさせます。

 モチーフとして使われている短冊にも注目したいです。七夕といえば、天の川、織姫や彦星なんかが連想されますね。『月』というテーマに対して徹底的に一貫しているのだなと思いました。

 あと死体が綺麗なんですよねぇ。夢見里さんの作品はどれも丁寧で繊細な筆致で描かれていますが、この作品も例にもれず、本来グロテスクであるはずのものが美しく見えてきてしまう。主人公が姉をどんな風に思っているのか、文章からも伝わってきます。

 ひとこと紹介は「終わった後の恋物語」とつけました。読んでいただければ、すぐにわかりますが、この話は悲しいかな、終わってしまった後の話です。もしも間に合っていたら、何か変わったの? そんな虚しい問いかけも、月の美しさの前では溶けて消えてしまうんでしょうね。