『世間の心臓』にナイフを突き立てようとした、ある男性の物語。

このご時世、誰もが考えることだと思います。
今の政治はおかしい。金持ちはおかしい。世界はおかしい。かといって、自分が画期的な何かを起こす『明確な』能力はない。どうしたものか。否、どうとでもなってしまえ。

それを具現化し、人間臭く見事に描き切ったのがこの作品です。
政治という『大規模な』ものについて主人公は考えるのだけれど、特にできることはない――というわけでもない。

主人公の思考は政治そのものから昨今のメディアにまで及び、一種のテロ行為をも想像の範疇に含みます。

こんな考えを持って何もしないのは卑怯なのか?
反映されるかどうかも怪しい自らの選挙権一票に価値はあるのか?
勧善懲悪を為すことを他人に押しつけ、自分は拡散させるだけ、それが正義と呼べるのか?

非常に考えさせられる短編です。文体も一人称で無駄なく進行するため、大変読みやすい=主人公の思考に触れやすい構造となっています。
拝読するのに、今ほどタイムリーな時機はないかもしれません。

是非、ご一読を。

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