江戸の人情とミステリが巧みに織り交ぜられた時代小説

 この小説の主人公、向井親信(むかい ちかのぶ)は妻を亡くし、幼い娘と息子を育てる浪人です。生活に苦労はありながらも平和に暮らしていたある日、彼の家に傷を負った若侍の幸之進を匿ったことから、親信親子の生活が一変します。

 江戸時代の風景や長屋の人情が詳細に描かれており、そこに幸之進の謎めいた背景が絡んで、最後まで読者を飽きさせません。
 生真面目で不器用な親信と、飄々として掴みどころのない幸之進の対照的な性格が物語を一層面白くしています。また、幼いながらもしっかり者の親信の娘、加乃が物語に彩りを添えています。
 この小説は時代小説とミステリの要素を兼ね備えており、どちらのジャンルが好きな方でも楽しめる作品です。

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