第11話

「兵助、お前どこまで知っている」


利執から京なまりが消えた。その顔は僧侶でも商人でもない顔に変わっていた。


「火つけは九番が行うのかと聞いている。」

「・・・・。」

「十二番は火付けはしないのか?」

「新兵衛の仇かと?」

「そうだ」

「新兵衛には生きていて欲しかったのさ」


利執は懐から短刀を取り出した。隠していた武器を見せることで会話をする意思を見せたと兵助はとった。しかし戦闘態勢は崩せない。兵助は佐太郎ほど他人の心底を図ることができないと思っている。


「俺は火事が起きる事を知っていた。だから新兵衛には出かけてもらったのさ」


「では何故」


「火事の騒ぎを聞いて新兵衛は戻って来た。まさか振袖の為に火の中に飛び込むとは思わなかったよ。着物なんかより生きて娘の所に帰ればよかったじゃないか。」


不意に利執は小さな溜息と共に短刀の鞘を払った。


ダーーーン


短刀と見えたのは仕込み拳銃だった。銃は火花を吹き弾丸は兵助の頬をかすめながら後ろへ飛んだ。




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