第4話
「行こう」
兵助が先に走り出した。
「どんな奴等だ?」
「忍び装束に傘を被って、、、
「面頬?」
「妙だろ?」
「ろくなもんじゃないな」
「四人見えた。もっといるかもしれない。」
佐太郎は黙って走りながら考えを巡らせ不意に言った。
「兵助、迷わず切れるか?」
この問いに佐太郎も自分と同じ結論を出したことが分かった。
「そのつもりだ」
「上等だ」
二人は互いに隣にいる男を頼もしいと感じた。
風に吹かれる木々の騒めきと遠くから聞こえる半鐘はんしょうの音に混ざって数人の足音が聞こえる。足音は四つ。その内、前を走る二人は、ほとんど音をたてずに走っている。遅れて二人は体が重いのか、大男の様で足音を立てながら遅れて走って来る。
「佐太郎」
「聞こえてる」
二人は立ち止まり気配を消した。
同時に左手は剣の
ヤツ等は間違いなく
兵助と佐太郎は同時に
見据えた所から、やはり二人の忍び装束が現れた。
二人が何の
兵助は中段の構えのまま突進をはじめ、佐太郎は
後ろからやって来る大男が姿を見せるまでに、この二人を斬ると決めていた。
忍び装束は、ほとんどノーモーションでクナイを投げた。
佐太郎は剣を振り下ろして飛んでくるクナイを叩き落とした。忍び装束は一瞬、逃げる姿勢をとったが、思い直し忍び刀を抜いた時には腹から心臓まで切り裂かれていた。
兵助の方は飛来するクナイを走りながら避けた。これは殆ほとんど兵助の特殊能力と言えた。
忍び装束は何かを投げると分かるのだ。
そして、どこへ打ち込んで来るかが兵助には分かる。
忍び装束にしてみれば、互いに走り寄りながら距離を縮める中で、打ち込んだクナイが音もたてずに標的をすり抜けるなど考えられる事では無い。
あっという間に兵助が目の前に迫った時、初めて忍び刀に手を掛けたが心臓を一突きだった。
どさりと忍び装束が倒れた。
再び兵助と佐太郎が並び立った時、二人の新手が現れた。
大男だと思っていた二人は肩に仲間を背負っていた。背負われた者は死んでいるか、気を失っている様で全く動く気配は無かった。
驚いたのは仲間を背負った二人だった。
見た事もない敵が抜刀して立ちはだかっていると言う事は、前方を走っていた二人が声も上げずに死んだと言う事なのだ。
二人は顔を見合わせて頷き、背負った仲間を地に降ろした。
降ろすと言うよりも落としたに近い。
そして、やはり飛び道具を投げてよこした。
その寸前の事だった。火薬の匂いがする。
「兵助、火薬だ」
「来い」
兵助は全速力で走り出した。佐太郎も突進した。
火薬を使うと言う事は爆弾の類たぐいに決まっていた。
爆薬に仕掛けを施した炸裂弾である。
それを炸裂させる為には放った者から、ある一定の距離までは離れなければ爆発しない。
兵助は一瞬にして戦法を決めた。
炸裂弾を交わそうともせずに突進して来る敵を見て忍び装束は驚いたに違いない。
慌てた二人は逃走すると決めたが遅かった。
炸裂弾は十分に離れた所で爆発し、その時には炸裂弾を放った二人は地に伏せていた。
佐太郎は忍び装束に傘を被った異形の物を見つめながら考えていた。
火薬の匂いがしたのは偶然だったのか?
兵助と佐太郎が立っていたのは
同時に兵助も考えていた。倒れている忍びの傘にぶら下がっている札の様なモノ・・・。
「どこかで見た気がする。どこだ?」
とても大事な事に思えた。思い出さなくてはならない気がしていた。
パサ 鳥が木に降り立つ様な音がした。
「お前たちが殺ったのか」
兵助と佐太郎は全身から冷たい汗が噴き出す心持だったに違いない。
無意識に互いの背中を守備する立ち位置を取った。
どんなに鍛えても背後が弱点になる事は避けられないからだ。
二人の緊張を風の音が更に過敏にさせる。
取り囲まれている気配があるにもかかわらず、どこに居るかを掴めないでいた。
「ふぅ」
佐太郎は小さな息を吐き八双の構えを解いた。
その気配に兵助も上段構えを解き、だらりと腕を下した。
敵の位置が分からないからには構えによって前方の視界が少しでも欠ける事を嫌ったのだ。
ぼんやりと、どこを見るともなく全体を見る。
どこかに焦点を合わせて見回すよりも、この方が視界を最大限に広げる事ができるのだ。
「お前たち、面白いな」
声の主は音もなく兵助の前に現れた。舞い降りたといった方が正しいかもしれない。
佐太郎はそれでも兵助の背後を守る体制を崩さなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます