離れたくないからこそ、後輩君は追いかけて、踏み込んで来たんじゃないかな

 感染症の、距離を取るために開発されたアイテム。猛威が去った後も、そのアイテムは普段使いとして、生活の中に残っていた。

 他人との接触を監視するそのアイテムは、許可を与えられていない者が近づくと注意を促し、接触されると自動で通報されるという。

 卒業式の日、人知れず校舎を後にする主人公を追いかけてきたのは、同じ部の後輩君。
 それまでの、たったひとりの部が、彼がやってきたことで、なにかが変わろうとしていた。その矢先の卒業。そのわけを思い知らされたくなくて出てきたのに、彼は追いかけてきた。

 後輩君が縮めた距離を、アイテムが無情に警告し、通報する。

 この後、主人公は、後輩君のその手を取るのか? それとも突き放すのか?
 ラストシーンまで焦ったい。でも、その主人公のこころの葛藤が初々しい。そして、ふたりの想いが甘酸っぱい……。