エピローグ凸は元の世界で
扉を閉じると同時に元の世界に戻っていた。
場所も時間も、穴に落ちた時とまったく同じ。その証拠に、目の前にペカルがいる。不思議そうな顔で俺を見ている。
今はまだ手が届きそうにない尊き俺のライバル。
いっとき、彼の力にあやかる事も考えたが、最早そうしようとも思わない。なぜなら、異世界での体験が俺の背中を押してくれるから。
動機が不純だったとはいえ凸したついでだ。挨拶だけはしておこう。
「すみません、いつもあなたの動画を見てる者なんですけど、名前は――」
「
――ッ!
意味がわからなかった。思わぬ番狂わせに戸惑いを禁じ得ない。
「な、なんで俺のこと……」
彼が自撮り棒を折りたたみながらこう答える。
「うわヤッバ、まさかこんな所で会うなんて思わなかったっスわ。ここだけの話、俺あんたの動画を見てミーチューブ始めたんスよ」
「はあ!? 何言ってんのこの天才ミーチューバー。あ、わかった。これ底辺弄りのドッキリネタ?」
「うわこれが噂の神天然やばー。てか俺なんてぽっと出のラッキーボーイっしょ。尊敬するあんたにも出会えたし……え? いやいやマジマジマジ。そだ、これを機に俺と友達になってくださいよ」
小さな友人の言葉を思い出す。
――百年も生きてたら自然とこうなるでち。
底辺の俺でも、長く生きていればこんな幸運にも恵まれる。
なるほど。これでやっと腑に落ちたよ、チッチ。
彼がそう言って右手を差し出してくる。もちろんと言わんばかりに彼の手を握り締めたとき、今度こそ、視聴者と一緒に楽しめる動画を作れるような気がした。
「俺も同じ事を考えてた。ヨロシク」
神にあやかる卑怯な俺と巨人に凸する勇敢チッチ ユメしばい @73689367
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