ある程度不幸でなければならない。そこそこの幸せでじゅうぶん救われる

 ハッピーエンドのおとぎ話を守るため、バッドエンドの結末を迎えた主人公たちが戦います。
 軽妙で笑いを誘うあらすじから始まり、おとぎ話を組み合わせた考えさせられる展開で広げ、バッドエンドではないラストに胸を打たれます。

 個人的には「chapter:Evil」が好みです。
 この章に登場する悲劇の主人公たちは、自業自得のせいでバッドエンドを辿ったのです。
 似たような境遇だから、コスタスは同じ志しを持っていると信じていたのでしょう。自分も、同じタイミングで仲間の素行に衝撃を受けました。(ああそうか、最悪を味わってもそうするのかと納得している自分がいました)

 しかし、似たような境遇だから出会えたのです。「だから一人で戦っていた」からこそ、「それでも嬉しかった」のです。(彼の心情がよく理解できます。もう手遅れだから、何も変わらないし、悪化をどうすることもできない。うわあ、わかる)

 勇気を出して手を伸ばしたから、ちゃんと掴みとったストーリーに泣きました。失態を犯したから一生悪者なのではなく、しっかり立て直してみせた彼らに救われました。



 どの話もメッセージが強く、物語を通して激励しているような気持ちになりました。
 各章に登場する悲劇の主人公の組み合わせと提示されるテーマがよく練られていて、心に刻みこまれます。

 登場人物たちの抱えているものは、現代を生きている人にも共感できます。
 『バッド・エンド・プロタゴニスト』は登場人物だけでなく読んだ人も救ってくれます。

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