バッド・エンド・プロタゴニスト
PURIN
chapter:Ocean
prologue
あるバッドエンドの主人公
ふかいふかあい海の底、海以外のことなど知りもせず生きていた
けれどなんてことだろう、十五になったその日、どこぞの王子に一目惚れ
どれくらい惚れたかって?
嵐で船から投げ出された王子を助けてしまうくらい
海の底に帰っても王子のことばかり考えてしまうくらい
一緒に生きたいからと、自分の舌を差し出してまで王子と同じ生物になってしまったくらい
そうまでしたんだぜ? 気付いてもらおうとしたんだぜ? 愛されようと頑張ったんだぜ?
でも努力が報われる物語ばっかりじゃないんだぜ?
鈍感王子は目の前に命の恩人がいるのにすら気付かず、全然別の奴と結婚しちまった!
でもまだチャンスはあったのさ、姉さん達が髪と引き換えにもらってきてくれたナイフ、これであのバカを刺し殺せば元の自分に戻れるってさ! やったー!
なのにあの主人公、結局殺せなかったってさ! 忘れりゃ良かったのに、恋心なんか!
そして結局、たくさんの泡になって消えてしまいましたとさ!
めでたくなし、めでたくなし!
頁
一方こちらのバッドエンドの主人公
おおきなおおきな海に釣り糸垂らし、魚を釣って生きていた
けれどなんてことだろう、子ども達にいじめられていた亀を助けた数日後、海の中にある宮殿に行くことになった
どんな素晴らしいところだったかって?
宮殿全体が宝石でできていたり
タイやヒラメやカレイが見事な踊りをしてくれたり
夢のようなごちそうをたくさん出してくれたり
楽しかったんだぜ? 本当に楽しかったんだぜ? つい三日も過ごしちゃったくらいだったんだぜ?
でもいつまでも楽しく暮らせる物語ばっかりじゃないんだぜ?
地上に戻ってきてみたら、三百年も経っていて、知ってる奴はみんな死んじまってた!
でもまだここで終われたらマシだったのさ、宮殿の姫さんに渡された妙な箱、言われた通り開けなきゃ良かったのさ! やったー!
なのにあの主人公、開けちまったってさ! 守りゃ良かったのに、約束を!
そして結局、白髪のおじいさんになってしまいましたとさ!
めでたくなし、めでたくなし!
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