悪魔
要町駅に着くと麗華がいた。
莉桜と麗華はお互いに何も言わないでも、戦闘開始だと分かった。
翔太が見ても麗華の呪詛の力はすごい、全身黒く塗りつぶされたようだ。
さすがの莉桜も顔をしかめる。
2人が対峙した時のただならぬ雰囲気に小森が割って入る。
警察手帳を出して、2人を制止する。
その小森に向けて麗華の呪詛の力が放出され、小森は口から泡を吹いて倒れる。
小森が倒れたのを見て、野次馬が集まってくる。
しかし、集まってきた野次馬も次々と倒れるのを見て、なにかのテロと思ったのか、駅係員によって規制線が引かれた。
すぐに消防庁と警察が駅に集まってくるだろう。
駅の人たちはみな、麗華から発する黒い力を目撃していた。
幸い死者は出ていないようであった。
莉桜のすぐ後ろにいる翔太には呪詛の力は届いていなかった。
麗華に触れれば莉桜の勝ちだが、近づくことが難しい。
それほどまでに、麗華の力は強まっていた。
お互いにじっと立ちすくむ。
しかし、時間が経てば不利になるのは麗華のほうだった。駅を利用している何百人という人が麗華の呪詛の力を目撃していたからである。
ただ、倒れている人達にとっては麗華の力は危ない。
麗華がここにいるだけで、生命が吸い取られるようなものだ。
「もう、やめなよ」俺はいつしかそう叫んでいた。
莉桜と麗華がはっとした表情で俺を見る。
「麗華ちゃん、もう、やめな」
「人間ごときが私に指図するのか?」
「麗華ちゃんは、ただ友達が欲しかっただけなんだろ?」
「だから、今日だってこんなに寒い中、莉桜を待っていたんだろ?」
「多分、小学校の時だって、中学校の時だって、何でも話し合えるような、ただの友達が欲しかっただけじゃないのか?」
そう言いながら、俺は莉桜の影から出て、麗華の方へ一歩、また一歩と歩き始めていた。
「馬鹿な、そんなことをすればお前が死ぬだけだ」
「こんな寒い夜に駅でガタガタ震えている女の子を見捨てられるほど、寂しい人間じゃないからさ」
「ふざけるな、何を知ったようなことを、私はただ、人が憎くて、嫌いで、だから殺した、何人も、何人も、殺した、もう、私にはどこにも居場所なんてない、友達なんてないんだよ」
「麗華」莉桜が叫んだ。
麗華の体から悪霊が離れていく。
麗華の表情が、まるで小学校の少女のような優しいものになる。
ただ、次の瞬間。
麗華の背後から、大きな黒い腕が現れ、麗華の心臓をその体から抜き取る。
莉桜が麗華の体を抱きしめる。
最後に何か言いたそうにしながら、麗華は帰らぬ人となった。
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