第7話

 4月1日 朝


「あ、やべぇ。 ちょっと月渚! 駅前の『アモレ』ってどこ!?」

「何それ? てか出かけんの?」

「カフェらしいんだけど、わかんねぇ!」

「え? 女?」

「.....いや違う」


 なんでこういう時は鋭いのか。

 時間で言えば9時を回った頃合いで、家には月渚と俺しかいないがそれがなんとも居た堪れない。


 たとえ会うのが女の子であろうが誰であろうが俺の自由なのだがなんとも事情が事情なだけにいうのは憚られる。


「(俺を買った女性に会いに行きます!)」

 そんなことを言った日には、大荒れになることは火を見るよりも明らかで、それこそ夕方の地元テレビ局に格好のネタを提供することになってしまう。


 ぶっちゃけ気持ちとしてはかなり気乗りしない。

 気乗りしないのだが、


「(相手俺の名前知ってるし)」

 取引メッセージを使って数回連絡は取り合ったので相手が誰かも聞き出すことはできた。


 そして俺はその人を知っている。

 別段凄いかかわりがあるなんてことは一切なくて、唯々知っているといった方がいいだろう。


「ねえ翔? 出会い系?」

「は!?」

「なんかすごい顔してるし。 そんな彼女とか急がなくても...」

「べ、べつにそんなんじゃねぇし!」


「ほ・ん・と・に?」

 鋭い眼光に睨まれてしまい変な汗が噴き出てくる。

 

 大丈夫、やましいことはあるけどこれはしょうがないことだ。

 それこそ、行ってみて誰もいなかったり、変な人がいたら逃げればいい。


「ちょっときいt」

「い、行ってきます!」

「あ、ちょ、待て!」

 幸い着替えは済んでいたので朝飯を犠牲に家を飛び出す。


 後ろで聞こえてくる怒鳴り声に、帰った後の修羅場を思い浮かべるがもう引き返すことはできない。


 立ち止まることが許されない俺は、急いで最寄りの駅へと走った。

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