第10話

 四月二日

 テレビで流れるニュースキャスターの言葉を借りるのであれば、春うららのお散歩日和。


 そんな、所謂過ごしやすい心地良いそんな頃合いに高校一年となった俺は、


「で、どういうことつばさ!」


 キリっと目を鋭くした月渚に怒られていた。


「ちょ、月渚るな! いてぇって」

「うっさい阿保!」

「な!?」


 まだ四月の頭ということもあって、お互いに学校はまだギリ春休み。

 だからこそ、昨日は合わなかったというか全面的に俺が会話を避けていた月渚に一日置いて簡単に結果のみを告げたのだ。

 そしてその結果、


「彼女ってなによ!!?」


「(うん、なんでしょうね?)」

 このようになっているわけである。


「ねぇ! 昨日のは出会い系だったの!!?」

「いや、そういうわけじゃ...」

「じゃあ誰!?」


 月渚がこのように声を荒らげている原因はきっと出会い系であった女の子だと思っているからだと思う。

 別段、昨今の出会い系批判をしたいわけでもないが高校一年になったばかりでそれというのが心配なのだろう。


「えっと、中学の先輩」

 

 たぶんこういっとけ納得する。


「は?」

「え?」


「(あ、あれ?)」

 

 もしや自分にはいなくて、俺に相手ができたことが気に食わないのか。

 そう思ったが口にはしない。

 多分、言ったが最後になるだろうから。


「ねぇ、どんな関係だったの? 同じ高校?」

「あ? まぁ」

「........ふーん」


 いまだ納得がいかないのか、単に面白くないのか、そんな顔をする月渚。 

 

 どうやって納得させたものか。

 

 そう思いながら、俺自身もあの後五条先輩に言われた言葉。

『私に恋を教えてほしいの』


  あの言葉を思い出した。


 


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

五条星那と634日 紫煙 @sienn

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ