第2話
「ねぇ、お昼。 用無いなら作るから教えてね」
「はいよ」
「ちゃんとよ」
「はいはい」
「敏君にはちゃんと聞いてね」
「....なんだそりゃ」
やけに張り切る母親に呆れながら、部屋に戻ればこちらをじっと見つめてくる3人。
「なんだよ?」
「いえ、どんなエロ本かったのかって」
「は?」
「ならビデオか」
「いや、ねぇから」
「じゃあプロテインか!」
「それはまだだ」
三者三様に散々なことを言ってくるが、彼女がいないのが前二人。
いるのが最後の一人なのだからきっとこういうところなんだろう。
ただ、たぶん俺もこうやって煽る側になったら前二人の系譜を継ぎそうなので二人のことを強く非難できないのが悲しいところだ。
「で、結局何買ったんだよ? あ、写真集か!」
「なにを閃いてんだよ! 漫画だよ、漫画!」
やたら確信を付いたような顔になって言って見せる一輝にそう返せば、なんとも興味を失ったような顔を見せてくる。
見てくれこそは優等生で、成績も顔もそこそこ伴ってくるくせにしゃべると駄目なタイプなのだ。
まぁ、そんな性格だからこそ一緒に居て楽しいのだが。
送り状の付いた段ボールをラグの上に降ろす。
「わり、洋一。 机の上のカッターくれ」
「はいよ」
「あっと」
洋一からカッターを受け取って、段ボールに張り付けられたガムテープに滑らしてく。
「...うーん、女の子だったのか」
「あ?」
「ああ、『ラコマ』だからさ」
送り状に記された名前を見てそう漏らせば、敏が反応を示した。
「(出品者名じゃわかんなかったわ)」
「ラコマは俺にはわからん」
「俺もあんま使ってねぇや」
「そう? 俺は使うけど」
どうやら洋一以外はあんまり使わないらしいが、使っていないほうが少数だと思う。
『ラコットマーケット』通称ラコマ。
個人でサイトを介して売買ができるために、ゲームがお店より安かったり、なかなかマニアックな本が買えたりとかなり便利なもんだ。
それに、未成年の販売でも最初の登録をしっかりすればいらないものが売れるので、一々モノを売るときに親がいらなくて結構便利なのだ。
「(今回はあたりだな)」
空いた箱の中は、梱包材が敷き詰められていて状態も写真よりはよく見える。
たまに雑な人もいる中でこういう人に当たれると嬉しい気持ちになれる。
さてどこに置こうか。
そう思って本棚に目線を送ったときだった。
「これだ!!!!」
洋一が目を輝かせて声を張ったのは。
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