第4話

「ラコマに自分を出品しよう!!!」


 そんな風に顔を煌めかせて言い放った洋一を俺達はただただ憐れむ目で見た。

 というよりかは、何がしたいんだという感じで見た。


「それ、ただの罰ゲームだろ」

「ふん! 彼女持ちに俺たちの気持ちがわかるか! な!」

「いや、同意を求めんな」

「それ」


 もはやなにを言いたいのかはわからないが、巻き込みを喰らっていることはわかる。

 だからそんな洋一に対して俺達ができることは、


「大丈夫か?」

「悩みでもあるのか?」

「ポテチ食うか?」


 膝を折って話を聞いてやることだ。


「あ、あのマジでそういう空気出すのやめて」

「いいんだよ。 ゆっくりでいいから」

「そうだ。 何がつらかったのかな?」

「ポッキーもあるぞ」

「いや、マジでやめて!」


 流石に心に寄り添う医療作戦はかなり効いたようで、本当に萎え切ったような顔になり、お茶をがぶ飲みした。


「で、実際はどうしてよ?」

「いや、な? 今からできる面白そうなことってこれぐらいしかないなぁって」

「まぁ面白いかは置いといて、すぐにはできるわな」

「だろ?」

「でもなぁぁ....」

「じゃあ、ふざけでも売れた人間にはこんど飯驕りでどうよ!」

「肉か?」

「「そこかよ!!!」」


 思わず俺と一輝でハモってしまったが、敏の食への探求心は凄いようだ。


「まぁ、じゃあやるか?」

「...せっかくだしな」

「まぁいいか」

「よし来た!!」


 ただ実際問題、中学生最後のこの瞬間をふざけたという気持ちはあった。

 それに、出品したところで実際は何も起きないと思ったからだ。


「んじゃ、やろうぜ!!」


 そんな洋一の掛け声と同時に俺達はスマホに指を滑らせた。


『カシオツバサ!! 特価!』

 タイトルはこんな感じだ。


「なぁ、値段は?」

「ん? まぁどうせネタだからいくらでも」

「おっけ」


 変に安ければ、それはそれで面倒にもなる気もするし。


「99999円。 これならネタってわかってくれるだろ」

『634(むさし)日、あなたの願いを聞き入れます!』

 

 なんともふざけ切った感じの商品説明だが、これでみんなネタだってわかるだろ。

 というか、出品自体がネタだし。


「(写真は....)」


 なんか適当な一枚を。 

 そう思ってフォルダーを見ていけば、中学校時代の写真が幾つか。

 それも今とはだいぶ髪型も違ったような、そんな写真。


「ま、これなら高校でネタにもできるだろ」


 その写真を一枚添付して、適当なカテゴリー付けをして出品完了。


「うし、三人ともできたか?」

「お、俺はできたぞ」

「いまインストール」

「同じく」

「.....そーゆーパターンか」


 どうやら一輝と敏はまだアプリが入っていなかったようでスタートラインが違っていた。


 とりあえず洋一のでも見るか。

 そう思って、立ち上がり洋一の方へ向かおうとしたとき、


「ちょっと翔!! ご飯どうするの!」

「あ、ごめん!」

「もう!! あ、みんな食べてく?」


 そういえば忘れていたことにしびれを切らした母親が半分空いた扉を開けてきた。


「えっと、どうする?」

「まぁ翔んちの飯うまいから」

「マジで?」

「えっと、よろしいんですか?」

「もう、敏君たら礼儀正し過ぎ!」


 敏の丁寧なところが皮切りに母親のツボをうまく抑えればそれが答えだった。


「じゃあみんな家でご飯ね!」

「はい!」

「ありがとうございます!」

「すいません」

「よっしゃ! 頑張っちゃうから!! あ、あと下でゲームでもすれば? 」


 部屋でだらだらも限界だったので、そんな誘いで俺達は下へと降りていったわけだが、、、



 なんか忘れてね?



 


 

 

 

 

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