第5話

「あ、受け取り評価しないと」


 夜、リビングでだらだらとテレビでバラエティを見ていて思い出したのは、今日の昼間のことだった。


「......スマホ、部屋か」


 思い出してポケットに手を当てるが、そこにスマホの感触はない。

 スウェットの柔らかい感触で思い出すのは、今日の夕方に完全に電池を減らしきった相棒のことだ。


「いくか」

 一応まだギリ三月ということもあって廊下は寒さを残している。

 その点リビングはエアコンが聞いていてあったかいから気持ちは乗ってこない。

 

 もちろん、行かなくてはいけないことはわかっているのだが。


「あ、翔。 どこいくん?」

「ん、スマホ取りに」


 突然ソファーから立ち上がったからか、横でだらだらスマホをいじっていた姉の月渚るなに不思議そうに見られる。


「ふーん。 戻ってくる?」

「たぶんすぐ戻る」

「おっけ。 戻ってきたらマリカしよ?」

「はいよ」


 今年で高3になるというのに男っ気のない月渚とゲームをやるのは、もはや日常のようなもので、普通は思春期とかに荒れるとかを中学んときにきいたがうちの場合は、親とはいまいちだったが月渚とは仲が良かった。


 まぁ、赤茶色に染められた髪でどっかの雑誌みたいなTHEギャルムーブをしている月渚だからこそ仲が保てたってのもあるし、月渚の思春期の愚痴相手が俺だったというのもあるだろうが。


 ただ、流石に高校が姉と一緒というのは何というか恥ずかしくて違うところを選んだ時にはめちゃくちゃ喧嘩になったが,,,


「ほら行ってきな」

「はいはい」


 早速、後ろでゲームの準備を始める月渚を置いて廊下へと向かう。


「寒!!?」


 廊下に出れば、どれだけぬくい環境にいたのかを実感し一気に体を冷気に襲われたが、ここで逃げるわけにはいかない。


 ひんやりとする階段は素足にはかなり答えるが、それを越え部屋へと向かう。


「......片づけ忘れてた」

 自室を開けて、電気を灯して真っ先に出たのはそんな言葉。


 遊びの片づけをさぼっていたの事を今になって思いだすなんて、浮かれ過ぎた。


「(ま、いっか)」

 お菓子もしっかりと、食べきられているのでだるい処理はないし、コップとかもまとめられているから汚さはない。

 本当に、あとはごみを捨てて流しに行くだけだ。


 リビングとは違って寒さを感じる自室に長居をしようとは思えない。


 幸い明日も休みだから。


 そう思って俺は、ベットに投げられた充電中のスマホに手を伸ばした。


 

 


 

 


 

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