稀代のクリエイターが描く不朽の名作が、世に疎まれ葬り去られた理由とは?

 違法薬物が蔓延し、それらを牛耳る組織が跋扈する時代。それらを一斉に取り締まる法律が制定されてから、十五年が経っていた。
 その法律が制限する範囲は、違法薬物そのものだけにとどまらず、様々なモノに影響を及ぼし、それによって、社会は更なる混迷の度合いを深めていた。

 その悪法の影響を受け、ひとりの稀代のクリエイターが、隠遁生活を強いられていた。
 そのクリエイターのもとに、足繁く通う、この物語のヒロイン。ふたりは、奇妙な絆で繋がれていたようだ。

 ヒロインの誕生日プレゼントと称して、クリエイターが、ひとつのファイルを、その手に託した。そして、この世を去る。更にファイルを巡り、それぞれの思惑が交錯する。

 普及の名作と名高い作品が、違法薬物とどう繋がるのか? ヒロインの向けた視線の先も含めて、その結末は、なかなか興味深い。
 上質のエンターテインメントは、それだけで人々を蝕むことができるのだろうか?