とある時代、波分篝はある調査のために山の中にいましたが気づくと見知らぬ村の座敷牢にいました。彼は金峰村の神楽舞の担い手として選ばれてしまったのです。
その神楽をやる祭りは曰く付き。舞った担い手は後に死んでいくとされています。そんな彼は座敷牢の中で苅安という青年に出会い村について説明され、更にその後村を治める一族間ノ瀬のものである間ノ瀬桐花と呼ばれる女性に出会います。彼らは村の犠牲が出る、すなわち生贄となる祭りに犠牲を出したくないと言うのが目的でした。桐花は村の祭りや閉塞感に嫌気が差して、村の外に出たがっていました。彼女は村の外に出たことがないのです。
しかし、祭を成功させなくては篝を含めた神楽の舞い手の命はありません。
篝と桐花は村から出るために、苅安は祭りを止めるために、冬という不思議な人物と交流しながらも、今回の行われる祭りを成功させて不可解な舞い手の死を止めなくてはならないのです。
その中に出てくる語られる伝承や人物の謎。忘れ去られ、隠されている想い。見えてくる我々の醜い人の業について。所々に伏線が隠れていて、ついつい追って読んでしまいます。
重い伝奇が好きな人にたまらない物語。皆様、一読して見てはいかがでしょうか?
世間の風潮から断絶された山奥に、ひっそりと佇む金峰村。
主人公である篝はその牢屋で目を覚ました。
彼は、村の祭事に纏わる陰鬱な災禍の生贄として捕らえられたのである。
しかし篝は理不尽な現状に屈しなかった。
迫る刻限の中で僅かばかりの自由を駆使し、彼に同調する個性豊かな協力者達の力を借りて、村の謎に追求していく。
しかし深みに潜れば潜るほどに新たに現れる謎。影のようにチラつく、ここには居ない誰か。
徐々に浮き彫りになっていく、幽世にも似た異質な領域に青年は震撼した。
しかし、明かされたその背景には、邪悪、憎悪とは別に人間としての情愛と悲懐があった。
最後まで読んだ人はもう一度、読み返してみてほしい。
序章の言葉が誰のものであったのか。ふとした言葉がどんな意味を持っていたのか。
それを知れば、当時とはまた違った感情を覚える事になるだろうから。
閉鎖的かつ古い因習が残る山奥の村、金峰村に攫われ、土着神に捧げられる神楽を舞うこととなった主人公、篝。村で出会った協力者たちと共に、村が抱える秘密へと迫っていくが、彼自身や協力者たちにもまた秘密があり――?
読みやすい文を追っていくうち、登場人物たちの事情や世界観が少しずつ明らかになってきたかと思いきや、かなり気になる新たな謎が残されていく。読み進めるほど次話を求めてしまい、はまり込んでしまう作品。徐々に明らかになっていく謎、唐突に明るみに出る謎とその答えは驚きと、じんわりと溢れる切なさを与えてくれます。
ダークでミステリアスなだけではない、美しく切ない伝奇物語。人を好いた罪を背負ったのは誰か、混ざり合う謎の行方はどこに向かうのか。あなたの目で確かめてみてください。