概要
神が私を殺しても、私は神を待ち望む。
見よ。神が私を殺しても、私は神を待ち望み、なおも、私の道を神の前に主張しよう。(ヨブ記13章15節)
時は16世紀、スペイン王国統治下のオランダ。宗教改革の波はこの地にも及び、ここオランダでは主にカルヴァン派のプロテスタントがスペインに対する独立運動を展開していた。そんな時代の激動の中に、後世に“再洗礼派”の名で呼ばれる人々がいた。彼らはキリスト教のもっとも重要な秘跡の一つである小児洗礼を否定し、成人の洗礼のみが有効であるという主張を唱えたため、カトリック、プロテスタントの両派から激しい弾圧を受け、多くの者たちが虐殺された。
そして、アスペレンのディルク・ヴィレムスという青年もまた、その一人であった。
自主企画「草食信仰森小説賞」において大賞を受賞し、イラストをいただきました。下記に
時は16世紀、スペイン王国統治下のオランダ。宗教改革の波はこの地にも及び、ここオランダでは主にカルヴァン派のプロテスタントがスペインに対する独立運動を展開していた。そんな時代の激動の中に、後世に“再洗礼派”の名で呼ばれる人々がいた。彼らはキリスト教のもっとも重要な秘跡の一つである小児洗礼を否定し、成人の洗礼のみが有効であるという主張を唱えたため、カトリック、プロテスタントの両派から激しい弾圧を受け、多くの者たちが虐殺された。
そして、アスペレンのディルク・ヴィレムスという青年もまた、その一人であった。
自主企画「草食信仰森小説賞」において大賞を受賞し、イラストをいただきました。下記に
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!答えはその心に
率直な感想をはじめに言うのですが、信仰というテーマを強力な右ストレートで顔面に叩き込んでくる作品でした。殉教と実際の歴史を軸にする重厚な内容で三千文字台。それも八十年戦争を経て独立するオランダが舞台。八十年戦争真っ只中の十六世紀。オランダ、個人的にかなり好きな国なんですよ……。その点でも参りましたね……どこを切り取っても本当にいい作品で参りました。
それぞれの信仰が複雑に絡んでいる、と私は読みました。たとえば老爺となった牢番が最後に語る自分は恩知らずだったと伝えて欲しいという願いなのですが、そう言った理由をずっと考えていました。こうやって真剣に考察解釈を始めてしまう時点でもう本当に素晴ら…続きを読む - ★★★ Excellent!!!偽であってもやはり教授であらせられる
偽であってもやはり教授であらせられるようで、その高度な知識はいわずもがな、あまつさえこうも巧妙な文体を堂々と執筆なさるその力量に感服いたしました。
とまあ、私もそれっぽい文体でレビューしようと思っていたのですが、いかんせん学が無いので早々に諦めます。──────すごかったです。陳腐な言葉になりますが、おもしろかったです。
同じ神さまを崇めているのに、ただ価値観の違いでこうもすれ違ってしまうとは、居た堪れない気持ちになりました。
ただ、主要人物の看守の男、再洗礼派の男、両者も「結果」として同様に「救い」を求めていることに何となく光が見えたように私は思います。
あと余談ですが、本作の構成…続きを読む