巧みな構成。深い物語。和風ファンタジーの傑作。

 妖雛(ようすう)。人間でありながら妖怪でもある存在。「物の怪」と呼ばれる異形の魔物と戦う宿命を背負った妖雛の少女を主人公にした、和風ファンタジーです。

 三人称でありながら、情感豊かに綴られる地の文。
 重厚に練りこまれた世界観。
 自分の事を「俺」と呼び、明るい口調で話す妖雛の少女、志乃。一見おどおどしているようで、凜とした佇まいを見せる妖雛の少年、芳親。彼女らを取り巻く、魅力的な登場人物たち。
 本作の魅力はそれこそ語りつくせない程あるのですが、なによりもテンポよく進む物語でしょうか。
 世界観を説明しながら、どんどん展開が進行していく第一章。
 志乃の過去に触れ、一転しておだやかなテンポで進む第二章。
 読めば読むほどに、巧みな構成力に舌を巻くこと請け合いです。

 ──長閑な春の道。
 ──ゆったりと進んでいく彼女たち。

 志乃が辿った冒険活劇を、追いかけてみませんか?

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