連環する救済

 孤独な精神から脱出し、人間的成長を獲得する。言うのは容易いがとどのつまりどういったふうに作用していくのかが分かりやすく描かれていた。
 語り手は他人を冷笑的に分析する。しかしそれは内心の声であって表向きは社会性に則り衝突を避ける二面性を強調される。
 冒頭での元生徒に宛てた手紙には文字というよりは言葉に近い生々しさがあり、もっと言えば語らなくていいようなことまで書かれている。
 語り手の彼女は社会を上手く迎合できず、それを蔑むことで自己肯定する弱さがある。この物語はそんな彼女が元恩師から意味を与えられ、元生徒から信念を学び、それによって他人でしかなかった元同級生を仲間と認め過去と向き合いながら弱い自分と決別するまでを描いた前日譚だと読んだ。彼女の介在しない後日談とでも言うべき箇所(ここの回収は言う事ない好いシーン)では彼女を救った芯の強い天使のいたいけな一面が見られて、実は語り手だった彼女もまた……。
 布石が音を立てて噛み合う心地よさがある。語り手が切り替わって、それまでの視点とギャップが生まれる(自然なことだけれどスルーされがちな)部分もきっちり描かれていて素晴らしい。
 

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