第一章:森に住う異形

初依頼☆迷子を探すんでね

「ふぅ、登録料がいるなんて知らなかったけど助かったわ〜!やるな!」

「なんかキモいキャラね」


 道の人にギルドの場所を聞き、ギルドへ登録しようとしたがなんと登録料が必要だった。困っていると隣からキメラがドヤ顔でお金を出してくれた。一体何処から出したのか分からなかったが難なく登録できたのでいいとする。


 ちなみにこんなことがあった。



「ーーー。説明は以上です。よろしいですか?」

「え?あっはい」


 受付嬢が何か説明してくれていたようだ。だが俺は何も聞いていなかった。受付嬢はこちらを見下すような瞳で突いてくる。冷たい……。俺が悪いけどさ。


「それではこちらを」


 そう言って渡してくれたのは木の板だ。


「これは?」


 はぁ……とわざとらしく大きな溜息を吐く。


「ギルドカードだと先程、何度も、何度も説明したと思いますが?」


 まさか聞いていなかったとでも?と言いたげな顔を向けてくる。


「……知ってましたよ?試したんです。それでは」

「は?」


 俺は認めない。耳に残らない声が悪い。あいつ無理!嫌い!


 だが出ようとした時に色々聞かないといけないことがありすぐに踵を返した。


「受付嬢さん。ここって何処ですか?」


 は?と言う受付嬢。


 ダッサ!なんて声が隣から聞こえたが無視だ。



 ……と、こんな愉快なことがあった。ちなみにここはバルサン帝国のシラド辺境伯の治めるナラート街らしい。地図を見せてもらったが俺の住んでたアーサー村は端っこと端っこと言っていいほどに遠かった。何の罰だろう。ちなみに馬車でも3ヶ月はかかるのだとか。

 俺はそれを聞いた瞬間視界が白くなっていった。気絶したのは一瞬ですぐに起き上がったが受付嬢のこちらを見る顔はもはや憐みが含まれていた気がする。


 殴りそうになったが横にいたキメラを殴って収めた。ゴホッとか言ってこちらを睨むが適当にスルーする。そんな力込めてないし。ツッコミくらいだし。一応すぐに謝ったが受付嬢はこちらをゴミを見るような目を向けていた。またイラッとしてキメラの脛を蹴ったがキメラが涙目になるだけだった。すぐにまた謝っといた。謝罪は偉大だ。


 これで許してくれるだろう。


 さて、そんなことは置いておいて。


 俺たちはFランク依頼なるものを受けている。依頼内容は子供の迷子を探すというものだ。この依頼は受付嬢との睨み合いの時にちょうど発生したもの。


 いなくなったのもついさっきということだ。自分で探せよと思わなくもないが怠惰なモンスターペアレントなのだろう。目が血走り、綺麗な服装が乱れた父親はとても怖かった。


「土地勘あるの?」

「あるわけねぇだろ」


 アホなことを聞いてくるキメラに返事しながらとりあえず街を歩く。


「あ、あの屋台の串焼き美味しそうよ?」

「金ないが?」

「仕方ないわね」


 トテトテと屋台に寄って行きお金を渡していた。はいっと言って1本くれた。お世辞でもなく今まで食べた食べ物の中で一番うまかった気がする。美味しい、そう伝えるとキメラはニコッと笑った。無駄に整った顔が腹立つ。だがもう殴るのはやめておこう。仮にも仲間だ。


 ……あれ、でも魔物だ。


 頭が痛い。



 000



 捜索願いの出された娘さんは見つかった。

 だが、状況がよろしくない。何故なら巨漢とヒョロデクに迫られていたからだ。

 路地裏ということもあり人がいないことをいいことに攫おうとでもしたのだろう。

 許されることではない。


 飛び出して助けに行きたくなるが少し様子がおかしいことに気づく。


 少女の目に怯えがなかったからだ。

 そして何より、3人の身なりがいいということだ。


 俺は遮蔽を利用して覗き見、盗み聞きを働くことにした。


「なぁ、本当にいいのか?」

「流石にまずいと思いやすぜ」

「お願い。私を助けると思って!」


 ……ふん?やっぱり状況がおかしい。


「だが、それをしてしまうと俺たちも立派な人攫いになっちまうんだよな」

「ゴローの言う通りでさぁ。クリスを助けたいのは山々だが、俺たちも犯罪者にはなりたかねぇんだ」

「そんな……!私、売られちゃうんだよ!?奴隷になっちゃうんだよ!?」


 その言葉にゴローとヒョロデクはギョッとした顔を見せた。その向かい側でクリスという女の子は泣き始めた。そしてポツポツと話し始めた。


 自分の親が犯罪を犯し、バレてしまったこと。

 多額の借金を背負ったこと。

 その借金返済の為に自分の娘を売ろうとしていたこと。

 あとは聞いていた感じ、お互いに貴族の幼なじみっぽい。本気で心配しており、だが匿うと自分の家まで迷惑がかかり犯罪者になる可能性がある。そこを考慮してしまうとどうすることもできない、と言った板挟み状態だった。


 すごい複雑。


 さて、俺はここに親父さんを連れてきたら依頼解決でお金がもらえるがどうしたものか。人道的に行けば俺は見つからなかったと言うか、この少女を匿うのがいいのだろう。


 だがそんなことをする義理はないし、クーカ以外の女と一緒にいるのなんてごめんだ。


 結果出てんじゃん。


 と思うだろう。だがこの依頼は違約金を払わなければならない。


 そうあの親父さんに会わなければならないのだ。


 あぁ……めんどくさい。

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