世界中で出版されてほしい、心に沁み入る光を放つ超絶名作エッセイ

「神エッセイ」などという俗っぽい言葉はそぐわないと思いながらも、それでもやはり「神」という言葉を冠したくなってしまいます。
著者様のフランスへの想い、日本への想い、同居人様とのエピソード、旅のこと、食べ物のこと、生き物のこと、美術のこと、音楽のこと、フランス語のこと、映画のこと、政治のこと――。
心洗われるものやユーモアあふれるものからズシリと重いものまで、内容はさまざまですが、どのエッセイもこの上なく美しく透きとおった天然石の原石やタンブルのよう。
あえて「宝石」と書かなかったのは、緻密にカットされた煌びやかなダイヤモンドやルビーやサファイアよりも、自然の魅力を残した水晶や紅水晶や蛍石のほうが似合うと思ったからです。ひとを圧倒するような激しくまばゆい光ではなく、ひとの心にそっと沁み入る静かでやわらかい光――。
いったいどうすれば、こんなにもやさしく、あたたかく、伸びやかに、鋭く、世界を見ることができるのでしょう。著者様のこころと文章の美しさに、感性や表現の豊かさに、観察眼や洞察力の鋭さに、知識の広さや深さに、ただただ感銘を受けるばかりです。ぬぼーっと生きている自分が恥ずかしくなります。

日本はもちろんフランスでも出版されてほしい。いえ、もう世界中で出版されてほしい。
こんな超絶名作エッセイをカクヨムユーザーだけのものにしておくのは、あまりにも、あまりにも、もったいないですから。

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