Web小説のファンタジーの舞台というと、中世ヨーロッパ風や中華風の異世界が多いですが、本作の舞台は作者様のタグによると「弥生時代風」。新鮮な雰囲気が楽しめます。
ストーリーも文章も端正で無駄や不足がなく、キャラクター造形も秀逸です。
物語が進むにつれて、「このひとはこんなことを考えていたんだ」「このひとの目にはあのひとがこんなふうに見えていたんだ」などと驚かされ、やがて皆を愛さずにはいられなくなります……恐ろしいはずの山の女神様でさえ!
序盤はなかなか重く、主人公ナホと一緒に打ちひしがれてしまいますが、海の民カンダチ族の一人で、双子の兄であるアラクマと族長の座を争っていたオグマが出てくると、たちまち上質なユーモアが漂いはじめます。
読後感はさわやかで、ナホの成長ぶりに拍手喝采したくなるでしょう。少年少女が王になる物語が大好きな私にはたまりません!
ひとを傷つけること、ひとと争うことを良しとしないテーマにも共感します。
ひとがふしぎな力を持っていて、神と心を通わせることができた時代の少年の成長譚、どうぞお楽しみください。