美しさは見目ではなく、その『こころ』に宿るもの。

気品があり心優しくも、いろんな生き物の皮膚を移植した恐ろしい顔をもつ男。
無邪気で明るくも、人間の頭がそれぞれちがう『なにか』にしか見えない少女。

そんな二人ががらんとしたお屋敷で共に暮らすことになるところからお話ははじまります。『魔法使い』なんかの登場からファンタジックな世界であることがわかりますが、小難しい魔法やスキルなんかの登場はなし。絵本の中のような優しいロマンチックさに彩られた世界観に、主人公の穏やかな語りがよく合います。

この二人、お互いに幸せだったとは言い難い環境や運命を持っており、読者としてはひたすらこの二人の幸せを願わずにはいられなくなりました。自分のことをバケモノだと思っている主人公が少女と共に生きることでだんだんと自分の価値観の視野を広げていくくだりは、普段の私たちの生活にも通じるところがあるなと感じ入ります。自分だけ思ってるマイナスなことって、ありますよね…。

歪ながらも心を通じ合わせた『家族』ができあがったところで、これまたおとぎ話定番の暗闇が降りかかります。なんと主人公を残したまま屋敷を出て行ってしまった身勝手な『旦那様』が、突然帰ってきてしまうのです。たしかに帰還を待ち侘びてはいたけれど、もう自分にはさらに大事なひとができてしまった。

さあ主人公、どうする──!?この先はぜひ、本編にて!

……と、こんな引っ張り方をしなくてもきっと自然と、素朴で優しい主人公が幸せになる結末を追い求めたくなるはず。やさしいひともわるいひとも『わけわからんひと』も出てくる、短くも個性豊かな物語。

あなたの目に、あなたはどう映りますか?
そしてあなたにとって大事な人は、どんな『かたち』をしていますか?

私も青空を見上げなから、のんびり考えてみようと思います。

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