概要
武蔵野の片隅で、あなたを待つ
捜し人と間違えられた「私」は、相手の女性を放っておけず、こっそり後を付ける。待ち続けて捜す女と、ひたすら待つ男の武蔵野慕情。
おすすめレビュー
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- ★★★ Excellent!!!すれ違い続ける『いつか』を希求する物語
人喰い川や遠野物語という時折顔を覗かせる不穏なモチーフたちとうつくしく穏やかな情景描写の対比がおそろしくて美しいです。
この話の主人公が男性でありながら受動的に待ち続ける人であるところが、倍加して悲しく、そしてエモいです…
主人公の、"向こう側"へフラフラと揺蕩う妻の隣にいる男への感情を考えると主人公が遠野物語の示唆をしたのは抑えきれないやりきれなさが滲んだんだと思います。主人公はそんな状況への理解を欲していたのではなく、もっともっと哀しく虚ろなものを感じます。
それだけにこのお話は恐ろしいほどの情念の話であると同時に、確かな愛の物語なんだなぁと思います。 - ★★★ Excellent!!!これを愛と呼ばずして、なんと呼ぶ。
まさに傑作。
この一言に尽きます。
わずか4,000字。
読まなくては損です。
それも、時間に急かされて読むのではあまりに勿体ない。秋の夜に、ゆっくりと時間をかけて読んでほしい作品です。
主人公の男は、川の近くで女性から声をかけられます。
どうやら人違いらしいということがわかりますが、女性の反応はどこか要領を得ず、様子が気になった男はそっと後をついてゆきます。
この作品は少し古風な文体で書かれていますが、それがこの物語にとてもよく合っています。
物語の舞台は、少し古い時代の日本とも、現代の日本ともとることができます。そういった仕組みもまた面白く、一度目は古い時代の日本…続きを読む