すれ違い続ける『いつか』を希求する物語

人喰い川や遠野物語という時折顔を覗かせる不穏なモチーフたちとうつくしく穏やかな情景描写の対比がおそろしくて美しいです。

この話の主人公が男性でありながら受動的に待ち続ける人であるところが、倍加して悲しく、そしてエモいです…

主人公の、"向こう側"へフラフラと揺蕩う妻の隣にいる男への感情を考えると主人公が遠野物語の示唆をしたのは抑えきれないやりきれなさが滲んだんだと思います。主人公はそんな状況への理解を欲していたのではなく、もっともっと哀しく虚ろなものを感じます。

それだけにこのお話は恐ろしいほどの情念の話であると同時に、確かな愛の物語なんだなぁと思います。

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