人間は感情という刑に処せられている
- ★★★ Excellent!!!
何か恐ろしい物語を読んだ気がする。
幸せというランク付けは、主観的な感情によって左右される。私たちは「幸福感」によって生活が豊かであるか認識し、日々が充実しているか否かを判別する。
しかし、現代で幸福であると感じる人々がどれだけいるのだろうか?
数多の国際問題、社会問題、環境問題が巻き起こる中で、未来の幸福は約束されてはいない。
「感情という多様性の根源がなければ、共感でつながる社会から、理屈でつながる社会に変わる」
本作に上記の文章が登場するが、その通りなのかもしれない。
理屈のみで構成された社会は、合理主義・理性主義で埋め尽くされ、常に人類という種の進行にとって最善の道を歩むだろう。
そこには、これまであった「幸福」という概念すらなく、ただ「種」として存続し進化するための「何か」になる。
その「何か」とはなんなのだろう?
本作で登場する新興国・ジョルカで開発された『精神兵器』がもし実行に移されたとしたら、人類はどう変化するのだろう。
もはやそれは、「人」ですらないのかもしれない。
そら恐ろしい空想の世界を目の当たりにしてしまった……。