概要
弟が入院するとの知らせを受けて、兄はKindleの中身を整理した。
(第一回イトリ川短編小説賞 大賞受賞作品)
(お題『たったひとつの望み』)
(第一回イトリ川短編小説賞 大賞受賞作品)
(お題『たったひとつの望み』)
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!受け止めきれない現実をこう、見栄と意地でどうにか乗りこなすかのような
弟からがん再発の連絡を受けた兄の、おそらくはそれから数十分(長くとも数時間)の一幕。
ある日突然訪れる、身近な人の死のお話です。いえ作中では死どころか本当にがんであるかどうかさえ明言されていないのですが、ここでは(物語世界内部における事実はどうあれ、読んでいる人間の解釈としては)その前提で受け止めて間違いないものと思います。
通常、難病やそれによる死を扱った作品というのは、どうしても切なかったり悲しかったり重かったりするもの(あるいはしてしまうもの)だと思うのですけれど、この作品はまったくそう感じさせないところが魅力的です。難病や死を真ん中に据えているのに〝泣かせ〟の話にならない。いえ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!まるでドラマを見ているかのように
川系企画参加の小説は文章力の水準が高く、いつも勉強になるなと思いながら読んでいます。その中でも、この作品は特に素晴らしく感じたので感想を書かせていただきます。私が思うこの作品の良いところは、文章の立体感です。私は小説を読むときに、頭の中に映像が浮かぶタイプの人間なのですが、これを読んだときにはめっちゃ高画質でしたね。口語体調の地の文、人物の何気ない動作、着信音までが私たちが普段経験するようなリアルさを持っていることが要因でしょうか。これが言葉にならない一般感を生み出しているように思います。あと、個人的にうまいと感じたのが行間の取り方です。文脈的な言葉のまとまりを意識して、より自然に読者が没入…続きを読む