少年と愛犬のハードボイルドな旅がはじまる

主人公・朗人は特別救急隊だった父を火災で亡くし、自閉症をもつ双子の姉、英子と母の3人で祖父母のもとで暮らしている。

誘拐された姉を中学生であるにも関わらず自力で探し出そうとする朗人ですが、彼には双子の感覚共鳴という、警察がとうてい持ち得ない武器がありました。

作品を何より特徴的なものにしているのは朗人と愛犬・ガオの視点が交互に切り替わりながら進むこと。
ガオが傷を負いながらも淡々と前に進む姿に畏怖すら感じました。鋭い感覚をもつ犬にとって我々の人間世界がどう映るかが見所のひとつです。

少年と愛犬の旅はどこへ行き着くか。
繊細な感情と怒濤のクライマックスを両立させて描き出すのがうまい作者様ですが、今回も圧巻でした。

散りばめられた無数の伏線が回収されるカタルシス。
タイトルの意味が明かされたとき、ぞくぞくする興奮を味わえます。

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