鋼の意思で悪意に立ち向かえ!

さて、この胸に押し寄せる感動をどうお伝えしましょう?
連載中何度も自作のエッセイで「とにかく読んでくれ!」と触れ回りたい衝動に何度襲われたことか……(さすがにご迷惑なので自重しましたけどね)
そのくらいに素晴らしく皆様にぜひ読んで欲しいと思うような物語でした。

この作品にどこでハマったのかというともう1話目です。
物語の主人公は英子と朗人の双子、そして二人の愛犬ガオです。
英子は自閉症を抱える姉なのですが、弟朗人とのやり取りがとにかく素晴らしかったです。恥ずかしながら私は自閉症という物について理解しておらず、それについて教えられたというのもありますが、何より素晴らしく感じたのは姉弟が互いの理解者であることです。冒頭部分は朗人が一方的に英子を理解しているという風に思っていたのですが、違います。英子もまた朗人を理解し、守ってきたのですね。
その姉弟の強い絆を感じた時にああ何て愛情深い物語なのだろうと感動しました。

全ての物語は英子が謎の男によって連れ去られるところから始まります。
主人を追いかけ、身を削るように旅するガオ。双子の共鳴感覚と利発な頭で推理し、出会った人々の縁に助けられながら英子を追いかける朗人。脇を固めるのは粋な人々。人の情という物に心が温まりました。
2人の物語がキレイな編まれた縄のように物語を巧妙に作り上げているところはお見事としか言いようがないです。
松乃木さんの筆力も圧巻で、微細な描写と読者を引きずり込む迫力、息をも忘れる展開に、魅入られたように読み込んでしまいました。
そして何より語りたいのはラストの熱い展開。心がぐっと引き寄せられました。
素晴らしい演出だと感動しまして。
これは魂の物語だと思います。
とても良い物語だと思いますので皆さまに読んでいただきたく思います。
おすすめいたします!


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