さて、この胸に押し寄せる感動をどうお伝えしましょう?
連載中何度も自作のエッセイで「とにかく読んでくれ!」と触れ回りたい衝動に何度襲われたことか……(さすがにご迷惑なので自重しましたけどね)
そのくらいに素晴らしく皆様にぜひ読んで欲しいと思うような物語でした。
この作品にどこでハマったのかというともう1話目です。
物語の主人公は英子と朗人の双子、そして二人の愛犬ガオです。
英子は自閉症を抱える姉なのですが、弟朗人とのやり取りがとにかく素晴らしかったです。恥ずかしながら私は自閉症という物について理解しておらず、それについて教えられたというのもありますが、何より素晴らしく感じたのは姉弟が互いの理解者であることです。冒頭部分は朗人が一方的に英子を理解しているという風に思っていたのですが、違います。英子もまた朗人を理解し、守ってきたのですね。
その姉弟の強い絆を感じた時にああ何て愛情深い物語なのだろうと感動しました。
全ての物語は英子が謎の男によって連れ去られるところから始まります。
主人を追いかけ、身を削るように旅するガオ。双子の共鳴感覚と利発な頭で推理し、出会った人々の縁に助けられながら英子を追いかける朗人。脇を固めるのは粋な人々。人の情という物に心が温まりました。
2人の物語がキレイな編まれた縄のように物語を巧妙に作り上げているところはお見事としか言いようがないです。
松乃木さんの筆力も圧巻で、微細な描写と読者を引きずり込む迫力、息をも忘れる展開に、魅入られたように読み込んでしまいました。
そして何より語りたいのはラストの熱い展開。心がぐっと引き寄せられました。
素晴らしい演出だと感動しまして。
これは魂の物語だと思います。
とても良い物語だと思いますので皆さまに読んでいただきたく思います。
おすすめいたします!
主人公・朗人は特別救急隊だった父を火災で亡くし、自閉症をもつ双子の姉、英子と母の3人で祖父母のもとで暮らしている。
誘拐された姉を中学生であるにも関わらず自力で探し出そうとする朗人ですが、彼には双子の感覚共鳴という、警察がとうてい持ち得ない武器がありました。
作品を何より特徴的なものにしているのは朗人と愛犬・ガオの視点が交互に切り替わりながら進むこと。
ガオが傷を負いながらも淡々と前に進む姿に畏怖すら感じました。鋭い感覚をもつ犬にとって我々の人間世界がどう映るかが見所のひとつです。
少年と愛犬の旅はどこへ行き着くか。
繊細な感情と怒濤のクライマックスを両立させて描き出すのがうまい作者様ですが、今回も圧巻でした。
散りばめられた無数の伏線が回収されるカタルシス。
タイトルの意味が明かされたとき、ぞくぞくする興奮を味わえます。
W主人公の物語は数多くあれど、その片割れが『犬』という作品は珍しいのではないでしょうか。
本作は、正義感の強い少年・朗人と飼い犬のガオが、姿を消した朗人の双子の姉・英子の足取りを追う物語です。
人情あり、陰謀あり、そして肉弾戦あり。
一分の緩みもなくハイスピードで展開していくストーリーに、毎回ハラハラドキドキしっぱなしでした。
何よりも、ガオ視点の躍動感が素晴らしい。
獣特有の五感や身体能力がリアリティたっぷりに描き出され、凄まじい迫力を生み出しています。
満身創痍になりながらも大好きな英子を探し出そうとする姿に、何度も胸が熱くなりました。
朗人の成長も、見どころの一つです。
自閉症である英子への対応も素晴らしいものでしたが、彼女を追う途中で出会った人々への態度も、とても中学生とは思えない、ちょっとむず痒くなるくらい大人びたものでした。
背伸びしてでも早く大人にならねばならない理由が彼にはあるのですが……
クライマックスシーンは、文字を追っているだけでアドレナリン噴出。
朗人もガオも最強にカッコいいです!
この嵐のような一件を経て、朗人はようやく身体と精神の足並みが揃ったような印象を受けました。
しかし本作のMVPは間違いなくガオでしょう。
緊迫感溢れるドラマをお求め方にお勧めしたい作品です!