カルト宗教の恐ろしいところはなにか?
普段生活していると、このテーマに触れることはそうそうないかもしれません。
だからこそ、読むべき作品だなと思うのです。
大なり小なり、宗教やその教義は人の幸せを願うものであり、傷ついた魂の救済を願うものだと思うのです。
そこには純粋で崇高な目的と手段があります。祈りとかね。
しかし現実の宗教ではそれだけにとどまらず色々な問題が起こっています。
それは日々のニュースなんかでも目にしていることと思います。
その本来の目的とずれていった先で何が起こっているのか?
この作品の中で一つの物語が進行し、さまざまな問題を提起していきます。
ここで描かれるのは架空のカルト宗教です。
そのストーリーには日常生活と隣り合わせのリアルがあります。
これはあくまで作者の想像する物語ですが、そこから何かを感じ取り、読み取ってほしいという意志が伝わってきます。
それこそが物語のもつ力であり、わたしが惹かれる理由でもあります。
この物語を読んで、日常生活のすぐ隣にあり得る世界を想像してみてほしい。
何が正しくて、何が間違っているか、それを判断するために何が必要なのか。
このストーリーはそんないろいろを問いかけてきます。
ふだんなかなかテーマにされることのない物語。
それを真正面から問いかける力強い作品でした。
この作品を書き上げた作者の心意気に感動しました。
2020年に書かれたものですが、とても心に刺さったので紹介します。
最近、被害者救済法が成立したことで話題の宗教二世のお話です。
わたしには宗教二世の友だちも身近にいるので、とてもリアルだと思いました。
宗教に巻き込まれた家族、人間関係、霊感商法、献金問題、マインドコントロール。これフィクションかな? と錯覚するほどです。
主人公は沙羅という宗教二世の子どもですが、久美子という新興宗教にのめり込んだ母親もまた被害者なのかなと思います。
居場所がほしかった
自分の存在意義が見出せない―。
人生で悩むことがあると思う。
その心の隙をついてくる宗教という名の詐欺集団に狂わされた人々。
一度、マインドコントロールされてしまった人は自力では解かれません。
久美子の気持ちもわかる。
けれど、やはりわたしは宗教二世である子どものことを思うと、
自分ならそこまで行きつくかな……と考える。
絶望と希望、あなたならどう生きるのか?
星都ハナスさま渾身の作品です。 おススメします!
私は作者さまのファンで、いくつかの作品を愛読させていただいております。幸せな家族愛にあふれたエッセイや、キリスト教を解説した作品もユーモアや感性が光っていて、明るいお人柄にいつも癒され温かい気持ちになります。作品からうかがえる包容力あるキャラクターに心惹かれております。
ですが作者様の、暗くかげりあるエッセイの方は、途中で読めなくなってしまいました。知りたいと思いつつも、痛すぎて悲しすぎて読み続けられなくなってしまったのです。私が作者様に惹かれるのは、悲しみや辛さ、傷も抱えつつ、愛も闇も知っている方であり、その人間味の深さに心しめつけられております。
作者様は、作中の新興宗教の狂信者とも言える母親を自分の分身だとおっしゃいます。宗教にはまる人の特徴や教団の洗脳の手口をリアルに描いて下さっています。ストーリーは重く、不幸と悲劇の連鎖のようにも見えますが、人の中にある弱さや闇、その救い難さを教えて下さっています。
作者さまはご自身の経験も織り込みつつ、愛あるメッセージを込めてこの作品を描いてくれたのだと感じられます。辛くなるシーンも多かったのですが、最後には愛や良心を信じられる、希望ある形で物語を結んでおられます。それは作者さまの信じておられること、発したいものであったという印象を受けました。
読むのが辛くなってしまうような冷徹な展開・・・それもまた作者様の力量のなせる技でしょう。きれいごとではなく、ハッピーエンドとも呼べず、読む人はさまざまな問いを投げかけられるようで、感情移入せずにはいられなくなります。きつい、やりきれない、しんどいお話とも言えます。
宗教やコミュニティの持つ怖さ、人間の弱さ、醜さ、理不尽さなどがまざまざと描かれています。人間の持つさまざまな側面が表現された、中身の濃い作品でありました。