カクヨムユーザージャパリパーク旅行記・タコ君視点

タコ君

旅立ちの集い

出発当日の朝 AM7:30

遊園地には各メンバーが集まっていた。


僕は、どうにも昨日寝れなかった。夢の楽園、ジャパリパークに上陸できる、そしてなんと自分の好きな子とその楽園を回れると言うのだ。継月さんという方がこの企画を立ち上げたらしい、応募が聞き入れられたことを、地にクレーターが出来るまで土下座をせねばならないな、なんて考えたり、楽しみと緊張で、ロッジで眠りについたのは確か夜中の3時とかだった覚えがある。昨日の船から見えた泳ぐイルカのフレンズ、飛んでいくカモメなどの鳥のフレンズ。あの光景はもう、もう本当に本当に最高だった。今後の人生でどれだけの経験を積もうともきっとこれは忘れられないだろう。

そんな思い出話をしようか、なんて少々眠いままの目を擦ったりして、遊園地のステージの側で座って待っていると、遂に今回の旅の相棒、そして僕のずっと待っていたフレンズが近寄って来た。


「あーっ…と。君が、そうだよな?」

「あ、はい!…よろしくお願いします!」


白と黒で美しいフレンズへ、軽く頭を下げて挨拶をした。飄々としているように装っているが心臓ばっくばくで気が気じゃない。大丈夫ですかね僕、こんなんで。


「丁寧にお辞儀まで…私もしておかないとな。」


一瞬やらかしたな、と思った。お辞儀は彼女たちにとっては求愛行動に当たる。もっとも今回は人のするそれで収まったが。


「改めて、コウテイペンギンのコウテイだ。短い間だけど、よろしく。」

「タコです、えっと、ご自由にお呼びください、コウテイさん。」


立ったまま、自己紹介を済ませた。コウテイさんは少し決まりが悪そうだけど、すぐにアイドルの笑顔に変わった。


「緊張してるかい?」

少し置いて、

「…そうですね、結構。」

と答えた。


彼女は、

「よかった、私も実は緊張してて。でも、お互いリラックスして行こう?せっかくなんだから楽しまないと…だろう?」

と。

僕は別に、人の顔を見るのが苦手なわけではない。目を合わせるのも同様だ。しかし今のは不味い、さすがアイドルと褒め称えるべきなのも重々に賛成だが、いや、しかし、少々待ってやくれないか、こちらを見て顔を覗き込んで笑顔になった彼女の瞳、片方しか見えない深海のように深い眼に僕は殺されたかと思った。急いで目を下に逃がそうとしたが、直後脳がそこに聳える山脈を捉え僕は笑うしかなかった。


「…ふふ、よかった、笑ってくれて。

 よろしく、改めて。」

僕は、

真っ直ぐ真っ正面をなんとか向いて手をとった。

「…よろしくね、コウテイさん。」

敬語が蕩けたのに気がついたのは、ステージより響いたアナウンスを聴いてからである。全くアイドルというのは愛を$に変えるなんて言うけれど、技を見れば確かに、彼女はプロだと納得した。


『あーあー。マイクチェック、ワンツー。

参加者の皆さーん!そろそろ出発のお時間ですので、ステージ前への集合をお願いしまーす!』


「行こうか。」


握った手をひいてくれた彼女を見て、何となく憧れが友達フレンズになった気がして、僕は旅のエントランスをくぐった。

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