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 もう一度目を開くとそこは白い天井と壁を持った白い部屋の、白いベッドの上だった。

 ぼくはキイロの姿を探したけれど、狭い部屋の中には彼女も、彼女の車も見当たらなかった。

「もしもし、沢木さん。聞こえますか」

 その代わりに、白衣の眼鏡がぼくを見下ろしている。知らない眼鏡だ。

 ぼくは圧迫感を覚えて、それを否定した。

「いいえ、まったく聞こえません」

 すると眼鏡はぼくを嗤って言った。

「聞こえているようですね。冗談が言えるくらいに良くなったんですか」

 気分が悪かった。ぼくはたまらなくなって虚空を探した。けれど虚空は、探していると決して見つからない。

「いいですか、沢木さん」

 よくない。

「聞いてください」

 聞きたくない。

 ぼくは左右に首を振っていた。

「まだあまり状態が良くないようですね。もう少しお薬を投与しておきましょうか」

 眼鏡は右の拳を自分の顎に添え、独り言のように呟いた。

 気分が悪かった。

 ぼくは大声で泣いた。

「メェ」

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