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1/1(最終話)
ミドリは地べたに寝転がっていた。
「ミドリ、お待たせ。大丈夫、風邪引いてない」
ぼくはミドリを抱き上げた。ミドリの体はとても冷たい。ぼくはセレナに温かいコーヒーを買ってきてもらった。
「飲んで、ミドリ」
ミドリはコーヒーを飲もうとしない。口元にコーヒーカップを当てると、ミドリの体は粉々に砕け散った。
その時、虚空がぼくの髪を、目を、耳を、鼻を、舌を、心臓を、肺を、右腕を、左足を、脳髄を、その他の全ての部分を埋め尽くした。だからぼくはそのまま動けなくなって、何も感じられなくなってしまったわけだ。
気付くとミドリの欠片のほとんどは、もう誰かに持ち去られてしまっているようだった。セレナが一つだけ隠していてくれた欠片をぼくらは持って帰って、庭に埋めた。そこから芽が出て、葉が出て、ミドリが生まれた時と同じように、一人の子供が生まれた。
ぼくは、ミドリの欠片から生まれた子供にキイロという名前を付けた。
キイロはセレナをとても気に入った。それはそうだ。彼女はキイロなのだから、セレナを気に入らないはずがない。セレナもキイロを気に入った。キイロとセレナは本当の兄妹のように育って、それが、ぼくにはとても嬉しかった。
〈了〉
15年くらい前の酔っ払いが書いた小説 ポンデ林 順三郎 @Ponderingrove
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