木漏れ陽の里

作者 うたかた。

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★★★ Excellent!!!

本作は大学を卒業して就職したものの、周囲と歩調が合わずに辞めて引きこもりとなってしまった青年が、林業と出会い再生していく物語です。
輝かしい未来を夢見ることも、過去を振り返り反省することも、どちらも大切で正しいことです。しかし、得てして正しいことが最適手であるとは限りません。そして、ダメだ、失敗だと論じるだけでは、問題は解決されません。
林業に従事する職人の言葉を通して、今をどう見つめていくのか、或いは今とはどこにあるのか、考えさせられる作品です。

★★★ Excellent!!!

 主人公は武蔵野に住む元引きこもりの青年。青年は他人が普通にできることが苦手だった。会話のリズムに乗れないし、電話対応も出来ない。大学では自分も大学生として、底辺であってもそれなりに暮らせていた。だから、社会人になっても、それなりに出来ると思っていたのに、突き付けられた鬱の診断。
 青年は長年引きこもっていたが、不服ながら林業に携わることになる。そこには青年とその両親の関係性の変化があった。
 青年の先輩にあたる職人の語りの中で、青年は自分の「普通」について考える。
 果たして青年は、自分の存在意義を見つけられたか。
 そして、「普通」とは何なのか。

 是非、御一読下さい。

★★★ Excellent!!!

人間関係の軋轢とままならぬ世間との間で消耗していた青年が、武蔵野の森と老人をきっかけにして再起していく話です。

見知った光景が失われる時に、自分の子ども時代の終わりを感じる。その一連の描写と表現が素晴らしかったです。

そして、老人の語る様はまるでうっそうと茂る木々の中に混ざった古木のようでした。語りかけてくる言葉が再び生きることへの期待を青年に与えてくれます。

古くからそこにあるものに目を向ける。

そんな営みの美しさを存分に描いた作品でした。

★★★ Excellent!!!

よくわからないけれど、最近、何となく感じる生き辛さ、というものは私だけではなく、おそらく皆が抱えているものなのではないかと考えるようになりました。

この物語の主人公は、とても正直で素直で純粋なのだと思います。

だからこそ、生きづらい。

私もサイクリングや登山、ダイビングなどによく行くのですが、自然と触れ合うと、心の中の凝り固まっていたものが解れていって、無になることができます。ゴチャゴチャ考えなくて済むようになります。

主人公もこのお話の先、少しずつ救われていくのではないかと願っています。

素敵な物語をありがとうございました。

★★★ Excellent!!!


 多くの人に読んでいただきたくて、レビューさせていただきます。

 本作品は、うまく社会に適合出来ない青年が、林業に携わることで──一条の光を感じ取る。そんな再生の、物語です。


 この世の中には、“普通の人が、普通に出来ること”を、何故か“普通に、出来ないヒト”、というのが一定数存在します。
 それら人々は──不器用な人、要領の悪い人、グズ、社会不適合者……──様々な言われ方がなされます。


 知らないうちに、社会は、急速に効率性を求め、利益だけを追いかけ、競争を強いる、過酷で凄惨な世界になってしまいました……。


 この作品の主人公は、“普通のことが、普通に出来ない”青年です。
 そんな彼は、当然のように、会社組織から弾かれ──ドロップアウトしてゆきます。

 ですが、人は人の──社会の中でしか、生きていけません。

 とある出来事を切っ掛けに、青年は再び、社会の中に身を投じます。

 社会に適合出来ない人間が、社会の中で、生きていかざるを得ない……その恐怖、その苦悩。
 そんな主人公の感情が、とてもリアルに掬われていて……胸に迫ります。
 読んでいて、思わず膝を打つような、強い共感を何度も感じました。

 そして、この短編には、主人公と同じ“生き辛さ”を抱える、先輩職人が出てきます。
 彼から、ポツリ、ポツリと紡がれる言葉が、青年の胸に滲み入り、彼の灰色の心に、柔かな色が差してゆく……
 その様子が、森の中の、静謐で澄んだ情景と共に、とても鮮やかに描かれていています。


 
 これは、たった四千文字の中に──大切なメッセージが、ギュッと詰まった、とても美しい物語。

 挫折経験のある人、社会の“生き辛さ”に苛まれている人、どうしようもなく“しんどい”人……そんな全ての人に、是非読んで欲しい傑作です。

★★★ Excellent!!!

 生きるとは何ぞや……。その言葉が身に沁みます。

 生きていく糧、生きていく意味、自分の居場所はここで良いのか。その先には不安しかない。でも、陽は優しく照らし続ける。感慨深いものを覚えます。
 目にすれば、スッと主人公の青年へ感情移入できる。それは作者様の心理描写が旨いからだと言えます。
 青年を見守る老人。作中を通して老人の強さもほのぼのと感じ、長い人生経験から生み出される助言は、生きる大切さをそっと諭してくれます。

 偉大な自然に抱かれる人たち。その中に人の優しさを見事に溶け込ませて、人の温かみを引き立たせる感動も味会うことができます。
 是非、皆様もご一読ください。物語を最後まで読み終えた時、きっと読者は人の温かみを覚えます。