主人公は武蔵野に住む元引きこもりの青年。青年は他人が普通にできることが苦手だった。会話のリズムに乗れないし、電話対応も出来ない。大学では自分も大学生として、底辺であってもそれなりに暮らせていた。だから、社会人になっても、それなりに出来ると思っていたのに、突き付けられた鬱の診断。
青年は長年引きこもっていたが、不服ながら林業に携わることになる。そこには青年とその両親の関係性の変化があった。
青年の先輩にあたる職人の語りの中で、青年は自分の「普通」について考える。
果たして青年は、自分の存在意義を見つけられたか。
そして、「普通」とは何なのか。
是非、御一読下さい。
生きるとは何ぞや……。その言葉が身に沁みます。
生きていく糧、生きていく意味、自分の居場所はここで良いのか。その先には不安しかない。でも、陽は優しく照らし続ける。感慨深いものを覚えます。
目にすれば、スッと主人公の青年へ感情移入できる。それは作者様の心理描写が旨いからだと言えます。
青年を見守る老人。作中を通して老人の強さもほのぼのと感じ、長い人生経験から生み出される助言は、生きる大切さをそっと諭してくれます。
偉大な自然に抱かれる人たち。その中に人の優しさを見事に溶け込ませて、人の温かみを引き立たせる感動も味会うことができます。
是非、皆様もご一読ください。物語を最後まで読み終えた時、きっと読者は人の温かみを覚えます。