独自の世界や設定で綴られる、『真の強さ』を持った少年の物語

悪人を取り締まる『浄化屋』として生きてきた少年『高天詞御』。しかし浄化屋のライセンスが失効してしまい、高卒の資格を得てライセンスを取り戻すため、『倶纏』能力者の若者達が集う養成機関の門を叩く――。

まず『倶纏』という本作オリジナルの異能力や、世界や国家や浄化屋の設定などなど、どれも非常に個性的で興味を惹かれるのが、魅力だと思える作品でした。
それでいて「造語ばかりでよく分からなくて読みにくい……」といったこともなく、リズムの良い文章や丁寧な説明によって、頭の中にスッと入ってくる部分はお見事でした。
更に、堅実な作風でありつつも、詞御の内に宿る倶纏の少女『セフィア』や、養成機関の序列一位にして皇女『依夜』、詞御の過去と繋がりのある『フィアナ』など、華やかなヒロイン達が登場し、作品に彩りを与えてくれています。彼女達とのやり取りを眺めるだけも満足できそうなほど、恋愛やラブコメ要素も優れていました。
ですが作中の大半を占め、一番のアピールポイントであるのは、その高い文章力から綴られる戦闘シーンでしょう。様々な形状や能力、階級を持つ倶纏を用いた戦闘は、どれも臨場感や迫力や疾走感に溢れていました。『主人公最強』や『チート無双』と言うと【軽さ】を感じてしまいますが、本作においては重厚な意味合いを持ちます。
そして単なる資格目当ての学園モノで終わらず、終盤にはその『強さ』を用いて大いなる運命に立ち向かい……と、単調さがなく実に飽きさせない構成でした。

ただ、上記の魅力的な設定や世界観を100%活かしきれているとは言えず、作品の構成においても、もっと他の方向性にすれば面白く展開できたんじゃないかな……と感じてしまう部分もありました。そこだけは勿体なかったです。

とはいえ逆を言えば、『まだまだ面白く展開できる余地を残している内容』とも呼べます。続編でも、全く別シリーズの新規作品でも、作者さんの次回作に期待が持てます。
それほどまでに高い文章力やオリジナリティ溢れる発想力、成長性を感じられる作品でした。面白かったです!

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