想いと願いを絵筆にのせて。呪い絵をめぐる、少年少女の愛と勇気の物語。

 ほんのり怪奇ミステリの香り漂う、和風な現代ファンタジーです。
 呪い絵と呼ばれる、呪力と意志を持ってしまった絵画が引き起こす怪奇現象を解決するため、主人公の少女が修繕画師(リペティファクター)という職業の少年に助けを求め……という流れですが、そこに至る過程がとても丁寧に描かれています。

 読んでて絵具の香りを思いだすくらいにしっかり書き込まれた情景や心理、そのテイストで怪奇の描写も描かれていくので、読んでいるこちらも千雨と一緒にドキドキハラハラさせられます。
 けれど、出てくる人物たちは皆とても優しく思いやりがあり、全体的に穏やかな印象の物語でもあります。

 終盤で明かされる真相はなかなか衝撃的。
 爽やかな読後感で、綺麗にまとめられた十万ほどの完結作品。お勧めです。

その他のおすすめレビュー

羽鳥(眞城白歌)さんの他のおすすめレビュー952