ほんのり怪奇ミステリの香り漂う、和風な現代ファンタジーです。
呪い絵と呼ばれる、呪力と意志を持ってしまった絵画が引き起こす怪奇現象を解決するため、主人公の少女が修繕画師(リペティファクター)という職業の少年に助けを求め……という流れですが、そこに至る過程がとても丁寧に描かれています。
読んでて絵具の香りを思いだすくらいにしっかり書き込まれた情景や心理、そのテイストで怪奇の描写も描かれていくので、読んでいるこちらも千雨と一緒にドキドキハラハラさせられます。
けれど、出てくる人物たちは皆とても優しく思いやりがあり、全体的に穏やかな印象の物語でもあります。
終盤で明かされる真相はなかなか衝撃的。
爽やかな読後感で、綺麗にまとめられた十万ほどの完結作品。お勧めです。
よく学校の怪談などで、偉人の自画像が動き出すなんて小話がありますが、あれに特化した物語です。特殊設定を、あえて絵画に絞り込むことでオリジナリティを演出しているともいえます。
さてどんな怪奇現象が起きるかといえば、呪い絵と呼ばれる絵画が、日常風景に馴染みながら生活を侵食して、いつのまにか人間を食べてしまうというものです。物理的なホラーではなく、精神性の強い捕食といったほうが適切かもしれません。
そんな恐ろしい呪い絵と対峙するのが、修繕画師という職業でした。
主人公は若い女の子ですが、ひょんなことから修繕画師の青年と出会うことで、物語が始まりました。出会った当初は、彼の職業のことを知らなかったのですが、主人公の肉親が呪い絵と関わっていたことから、脆くも日常は崩れ去りました。
ですが、青年の手助けもありますし、主人公自身にも才覚があったため、無抵抗のままでは終わりません。いつしか主人公と青年はコンビとなり、呪い絵に立ち向かうことになります。
さて、軽いネタバレをしつつ、内容を紹介したわけですが、物語の最後で衝撃の秘密が明かされます。どうやらこの青年には、なにか秘密があるみたいですよ。
青年に隠された秘密とは、いったいなんなのか?
それを知る手段はたった一つ。この物語を結末まで見届けることです。