第9話 新しい年から

ユウコ「あけましておめでとう!」

こうた「あけましておめでとう。」

ユウコ「じゃっ、行きますか!」

こうた「初詣って久しぶりかも。」

ユウコ「えーっ、毎年行かないの?」

こうた「高校の頃友達と行った以来。」

ユウコ「うっそーっ!よく今まで何事もなく生きてこれたねー。」

こうた「えっ?そんな重要?」

ユウコ「そりゃそーよっ。今年もいい1年になりますようにって。」

こうた「大丈夫。今までそこそこいい感じで過ごしてきたし。」

ユウコ「まっ、今年は大事よ!」

こうた「なんで?」

ユウコ「希望の勤務地に行けるかどうかが決まるしさっ!」

こうた「別にさー、神社で決まるわけないし焦ってないし。」

ユウコ「その他の事も!」

こうた「その他ってとくにないよ。」

ユウコ「気になってる人の事とか。」

こうた「あー、それだったら別にどうにかなるような関係じゃないし。多分。」

ユウコ「なに〜、あきらめてるわけ?」

こうた「う〜ん。なんて言っていいか。すごく複雑なんだよなぁ。」

ユウコ「自分の素直な気持ちをお願いするといいのよっ。」

こうた「素直な気持ち?」

ユウコ「自分がその人の事どう考えてるかが一番大事なんじゃない?」

こうた「うーん。」

ユウコ「好きかどうか、大事かどうか、一緒にいたいかどうか。みたいな?」

こうた「一緒にいたいかな。」

ユウコ「だったらさっ!」

こうた「そっか。じゃっ、お願いっ!」


カラーン カラーン 

パンッ パンッ

チャリ〜ン


ユウコ「安いっ!」

こうた「金額じゃない。気持ちが大事。」

ユウコ「よく言うよ。高校の頃以来に来たって言ってた人がさっ!」

こうた「10年分!」

ユウコ「ならよけいに安いっ!!」

こうた「気持ちが大事っ!」

ユウコ「叶うといいねっ!」

こうた「ありがとう。」

ユウコ「私の願いっ!」

こうた「そっちー?」

ユウコ「3年目の正直っ!」

こうた「って事は、2年間は叶わなかったってわけだっ。」

ユウコ「願いを温め中。」

こうた「諦めたら?」

ユウコ「いゃ〜っ!今年こそ絶対チケット当てて、ライブ行くんだー!!」

こうた「えっ!?そんな事3年もかけて?」

ユウコ「当たらないのよっ。全然。」

こうた「大丈夫か?この神社?」

ユウコ「神社は悪くない。」

こうた「じゃあ自分の運のなさを素直に認めるって事だっ。」

ユウコ「…うー、悔し〜っ。」

こうた「大丈夫!当たるよっ!」

ユウコ「ホント?当たるかな?」

こうた「…多分。」

ユウコ「弱気だなぁ…。」

こうた「まっ、今年はまだ始まったばかりだし、何が起こるかわからないっ!」

ユウコ「それもそうねっ。」


新しい年のはじまり。

みんなが気持ちを新たに。

明日の事もまだ見ぬ未来。

今言えるのは、

『良い年になりますように。』


ガチャ

おしるこ、きな粉、砂糖醤油、海苔。

今日だけは餅三昧。

雑煮はないけど。


こうた「あー、もうこんな時間か。」


気がつけばもう22時がすぎていて。

シャワーを浴びて。

今日は早々ロフトへ。


アヤ『あけまして〜、』


こうた「えっ、それもう言ったじゃん。」


アヤ『…あっ、そうだった〜。』


こうた「でも、今日になったばかりだったから、昨日の事みたいな。」


アヤ『うん。わかる。』

アヤ『初詣はー?』


こうた「会社の女の子が近くに住んでて、神社まで連れてってもらった。」


アヤ『私はジムの友達と。』

アヤ『‥おもしろかった〜。』


こうた「おもしろいか?初詣って。」


アヤ『…初詣っていうかその子が。」


こうた「あっ、俺も一緒にいた子がうけたかなぁ。」


アヤ『いっぱいお願いした?』


こうた「いっぱいっていうか、二つ。」


アヤ『えー、欲張り〜。』

アヤ『私は一つだけっ!』


こうた「俺も、主に一つだな。」

こうた「一つは希望の勤務地に早く行けますようにって。」


アヤ『へ〜、早く転勤したいんだ。』


こうた「あまり長く居ると、転勤する時寂しいじゃん。それに…、」


アヤ『それに?』


こうた「来春からはいないんでしょ?」


アヤ『あっ、うん。』


こうた「そしたら、ホントに一人暮らしになっちゃうから。」

こうた「今までは一人で平気だったけど、この生活に慣れすぎたなぁ。」


アヤ『私も。なんか一人は嫌かも。』


こうた「あっ、でも地元帰るんでしょ?実家に帰ったりしないの?」


アヤ『私の勤務地から実家遠いから一人暮らしだよっ。』


こうた「そっか。」


アヤ『なんか慣れすぎたね。いい意味でも悪い意味でも。』

アヤ『まっ、数ヶ月は居ますけどね。』


こうた「何月に引越し?」


アヤ『多分3月上旬。うちの会社の本社に戻る時のパターンがそうだからっ。』


こうた「こっちは支店があるの?」


アヤ『そう。たまにあるの。一年限定で地方の支店に行って勉強しろって感じで。』

アヤ『うちの会社は転勤ってほとんどないから、これが唯一の知らない地域の暮らし。』


こうた「そっかー。」


アヤ『結構不安だったの。でもこうたくんと話せて安心して過ごせた。』


こうた「お互い様だよっ。」


アヤ『でも、すごい縁だよね。』


こうた「そうだなー。だって人に話せないじゃん。信じてくれなそうだから。」

こうた「俺、会社以外でかけないから友達とかいないしさっ。」


アヤ『私はジムで偶然仲良くなった友達がいるけど、まだ話してないな。』


こうた「話しても信じてもらえないか〜。」


アヤ『うん。でも、帰る前には言いたくて。結構なんでも話したり、仲良いし。』


こうた「信じてくれるかなぁ?」


アヤ『わからない。でも、なんか言っておきたいんだ。』


こうた「そっか。俺は言う人いないし。」


アヤ『会社一緒の近所の子は?』


こうた「そこまで仲良くしてるわけでもないし、その子は絶対信じない。間違いなく。」


アヤ『そんなタイプなんだー。』


こうた「まっ、俺は言う人いないけど、信じてくれたらいいね。」


アヤ『うん。きっとその子なら信じてくれると思う。きっとね。』


こうた「引越しの日決まったら教えて。」


アヤ『うん。』


3月までのこの関係。

終わりが明確なので寂しいが心の準備はしておける。

今まで続いているのも不思議だけどこんな感じがずっと続けば。

そんな事考えても無駄なのに。

時間だけは待ってはくれない。


ユウコ「あっ、ちょっとここ寄るわ。」

こうた「ケーキ?誕生日?」

ユウコ「違うわよっ。今日は?」

こうた「ひな祭りかー。」

ユウコ「かわいいケーキ!」

こうた「うまそー。」

ユウコ「あげなーい!」

こうた「いらないし。」

ユウコ「去年は友達と…。」

こうた「今年は?」

ユウコ「友達とっ!!」

こうた「楽しそーじゃん。」

ユウコ「嫌味!?」

こうた「いえいえ。」

ユウコ「そんじゃねー。」

こうた「じゃー。」


3月になっても転勤の話はない。

早ければもうわかっている時期。

まだ1年なので今年はスルーだろう。

引越しがないのはバタバタしなくて楽でいいのだけど。

なんか置いていかれる感じで。


第10話に続く







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