第4話 祭が終われば

ドン ドン ドン

ヒュ〜 ドン ドン

花火が上がって祭りのはじまり。

この地域ではまあまあ大きい祭り。

賑わう人々、並ぶ屋台、この雰囲気はこの瞬間にだけ感じられる。


祭り初日、会社から出るこうたは、歳の近い事務のユウコさんと祭りに行こうかを話していた。

もちろん2人ではないが。


こうた「主任はどうします?」

主任「行くよ。行く行くー。」

ユウコ「じゃあ行きますかっ!」


歳の近い3人で祭りに。

祭りの場所はこうたのアパートの近くで、ユウコさんのアパートも意外と近いらしい。


主任「あー、なんか見るもの全部食べたくなるなぁ。」

こうた「主任さっきから食べてばかりじゃないですか〜。」

ユウコ「私もたこ焼き食べよー。」

こうた「ユウコさんも食べるね〜。」

主任「さぁー、次は〜、」


久しぶりの祭りはやっぱり楽しい。

転勤の多いこうたにとって、ホントに久しぶりの祭りだったのだ。


主任「うーん。満足。」

ユウコ「私も。」

こうた「じゃあ、解散しますか?」

主任「じゃあ俺は駅に向かうか。2人ともこっから近いんだったよな。お疲れ様っ!」

ユウコ「私たちも帰りますか。」

こうた「うん。そうしますか。」

ユウコ「家どっち方向ですか?」

こうた「この先まっすぐの分かれ道を左、そこから3分くらいかな。」

ユウコ「あっ、私あの分かれ道右なんで、そこまで一緒に行きますか。」

こうた「結構食べたねー。」

ユウコ「そうですね。私もお腹いっぱい。」

ユウコ「あっ、じゃあ私こっちなんで。」

こうた「お疲れ様です。」

ユウコ「お疲れ様で〜す。」


ガチャ

…あ〜、疲れたぁ。


お腹はいっぱいなので、さっさとシャワー浴びてゆっくりする事に。

テレビ見て、ダラダラして、この時間も結構好きだったりする。


…ユウコさんって結構家近かったなぁ。駅とかでも会った事なかったのに、ホント近所だったのは驚きだなぁ。


まだ転勤してきてそんなに経ってないので、知らない事なんてまだまだあるんだろう。

ただ、今日は祭りが楽しくいい日だったって事は間違いない。


アヤ『ヤッホッホ〜』


こうた「えっ!今日早くない?」


アヤ『そーかしら?もう23時すぎよ。』


こうた「あっ、いつのまに。」

こうた「そっかぁ、あまりに腹いっぱいでダラダラしすぎたんだな。」


アヤ『私も今日はお腹いっぱいで、結構ダラダラしてたかも。』

アヤ『あっ、久しぶりの質問!』


こうた「おっ、久しぶりかも。」


アヤ『誕生日。』

アヤ『いつか聞いときたくて。おめでとうくらいは言いたいでしょ?』


こうた「11月29日」


アヤ『あっ、いいに〜』


こうた「いいにくなっ!!」

こうた「ずっと言われてきたわ。肉なのに痩せてるとか。」


アヤ『いいにくなのに、痩せてるの〜』

アヤ『あ〜、にくなのに〜。』


こうた「おいっ、それが言いたいだけか?」


アヤ『うぁ〜、ごめん、ごめん。』

アヤ『純粋に聞きたかっただけよ。』


こうた「じゃあ俺も聞いとくわ。」

こうた「誕生日いつ?」


アヤ『3月30日』


こうた「覚えやすいかも。」


アヤ『そーかなー?』

アヤ『学生時代は、もう春休みだからみんなに忘れられるし、寂しいもんだよ。』


こうた「まっ、学生時代はそうかもしれないけど、社会人になったら関係ないよ。」


アヤ『そうかもね。』


こうた「おめでとうって言うよ。」

こうた「覚えてたら、だけど。」


アヤ『そーよね。』

アヤ『イイニクほどのインパクトないし。』

アヤ『痩せてるのに、いいにくって、プッ』


こうた「あーっ、今吹き出しただろっ!」


アヤ『してない、してない、吹き出したりなんて〜。』

アヤ『プップッ、』


こうた「あっ、またっ!!!」


アヤ『あ〜、ごめんなさいっ!』


こうた「ったく〜、子供みたいに。」


アヤ『ホントごめんなさいっ!』


こうた「いいよー。もう別に。」

こうた「気にもしてないし。」


アヤ『ちゃんとおめでとうするから。』

アヤ『でもその頃って、もうすぐ年末って時期で、やれクリスマスだ、大晦日だ、正月だ〜って感じで、なんか時間の流れが早くなってくみたい。』


こうた「ざっくりだけど、誕生日終わったらそんな感じで日々すぎてく。」


アヤ『先の話しすぎたね。だってまだ夏にもなってないのにね。』

アヤ『ふぁ〜、なんか眠くなってきたぁ。』


こうた「寝るかっ。」

こうた「おやすみっ。」


アヤ『おやすみ〜』


朝から暑くて目が覚める。

今日は土曜日だけど休みだ。

ダラダラ過ごす。

動かないからあまりお腹も空かず、軽めの昼食というか、ブランチ。

窓を開けてみると、祭りのにおい、賑わいなど部屋にいてもお祭り気分。

する事もないので、少し散歩に。

近所も駅方向以外はあまり知らない。

今日は駅と反対にも歩いてみた。

でも、結局人々の流れについて歩いていると、もうそこは見慣れた駅近の場所。

せっかくなので一人だけど祭りへ。

昨日とはまた違う感覚。

一人で。

昼間に。

散歩ついでに。


…あっ、りんご飴だっ。


せっかくなので買ってみる。

当然チョコバナナも。

昨日も食べたのに、お好み焼き、焼きそばまで買って。

今日の晩ご飯も、ここでゲット。


ガチャ

…ふぅ、疲れたなー。


汗もかいたし、シャワーでスッキリ。

冷蔵庫にりんご飴を入れて、晩ご飯のお好み焼き、焼きそばを食べる。

2日続けて食べても美味い。

このシンプルな味がいいのだ。

そして、またまたダラダラ。


アヤ『ねぇ〜、起きてますかー?』


こうた「あのさー、寝てたことある?」


アヤ『あのっ、ありがと〜!』


「ん?なにが?」


アヤ『りんご飴!』


こうた「あっ、あー、はいはい。」

こうた「いいえ、どういたしまして。」


アヤ『お祭り、行ったんだ。』


こうた「うん。晩ご飯もお好み焼きと焼きそば食べたし。」


アヤ『私は明日行くのぉ〜!』

アヤ『いいでしょー。』


こうた「いいでしょーって、俺今日行ったからもういいの」


アヤ『そっかっ!りんご飴もらったし。』

アヤ『チョコバナナ買ってくるから〜。』


こうた「あっ、よろしくー。」


アヤ『でもさ、お祭り終わるとすぐ夏じゃない?もっと暑くなるの〜。いゃ〜っ。』

アヤ『でも、明日は、たこ焼き、焼きそば、かき氷、クレープ、わたあめ…』


こうた「なんかの呪文ですかぁ?」


アヤ『違うし〜!明日食べたい物!』

アヤ『全部は食べません!』

アヤ『むしろ、食べれません!』


こうた「なんも言ってないけど…』


アヤ『あ、あの、お祭りってさぁ…』


こうた「えっ?祭りがどうした?」


アヤ『いや…、お祭りって、好きっ!』

アヤ『お祭り楽しみっ!』


こうた「??」

こうた「なんかすげ〜テンションだな。」


アヤ『いいのっ。楽しみなテンションって感じかなぁ。』

アヤ『チョコバナナ楽しみにねっ!』

アヤ『楽しみすぎるから寝る〜!』


こうた「寝るテンションも凄い。」

こうた「おやすみー。」


アヤ『おやすみ〜!』


楽しい楽しい祭り。

その楽しい祭りから、なにかが少しずつ。

ほんの少しずつだけど。

ずれはじめる。


第5話に続く














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