第3話 シェアすることにも

アヤ『だからさぁ〜。ねーってばー。』


こうた「そーいっつも飲まれっぱなしでまるで2人暮らしかって!」


アヤ『じゃあ、上の段に置かなきゃいいんじゃないんですかー。』

アヤ『しかも、いつも2本あるし〜。』


こうた「つい、上に置いちゃうんだよっ。」

こうた「2本買うのは暑いから、いっぱい飲むかもって考えての事!」


アヤ『もー、細かいっ!』

アヤ『今度またシュークリーム買ってくるからさ〜、ごめんってばー。」


なんとなく声と冷蔵庫の上の段のつながり。

こんな事も数週間たてば慣れるもの。

いつも変わらないやりとり。

これといって解決するわけでもなく、新たに何かあるわけでもなく。

ただ、毎日欠かさずつながってるようで。


アヤ『そーいえばさー、つながってる時間って23時くらいからだって気づいてる?』


こうた「あー、なんとなくそれくらいだって気づいてはいる。」

こうた「いつ途切れてるのかは、よくわからないけど」


アヤ『そーねー、おやすみって言うタイミングいつも違うけど、なんとなくそこで途切れてるような〜、イビキ聞こえるような〜。」


こうた「えっ、マジ!」


アヤ『うっそー!』

アヤ『イビキは聞いたことありませ〜ん。』


こうた「はいはい。」

こうた「まっ、聞かれてもいいけど。」

こうた「そういえば、来月どっかでお祭りあるみたいだね。知ってた?」


アヤ『うん。職場の人から聞いてる。なんか2週目の金曜、土曜、日曜の3日間なんだってさー。』

アヤ『行くの〜?私は多分職場の人たちと行くって感じ。』


こうた「お祭りか〜、たまにはそういうのもいいかもなー。」

こうた「なんか、引越してきてからどこも行ってないし、ロフトで独り言みたいに話してるだけだしな〜。」


アヤ『ちゃんと聞いてますっ!失礼ねっ。』

アヤ『まぁ、誰かが見たら独り言か。』


こうた「お祭りで会ったりして。」


アヤ『え〜、うんうん。あり得る。』

アヤ『今まで会ってないのが不思議なくらいだし、同じとこに住んでるっぽいのに。』


こうた「まっ、会ってもお互い気づかないと思うよ。だって見たことないしさっ。」


アヤ『それもそーね。聞いたのは名前と歳くらいだし、見た目の特徴なんかは聞いてないからなぁー。』

アヤ『知らないほうが気楽でいいかもね。』


こうた「まっ、そうかもな。」


アヤ『でも、少しは気になるかも?』

アヤ『だって〜、ほぼ毎日話してるわけじゃない。私たち。でも知ってるのは声だけだから、たまに考えるかな。』


こうた「たしかに。自分が話してる相手が実は声の高い男っていうか、オネエですってオチとか〜。」


アヤ『あのね〜。女です。』

アヤ『見たらわかるでしょ〜、普通に。』


こうた「だから、見えないって!」


アヤ『あっ、忘れてたっ。』


こうた「今まさにその話してる最中なんだけど、忘れるか?そこっ。」


アヤ『まぁ、私は女ですって事で!』


こうた「例えだって。」

こうた「あっ、全然話変わるんだけど、生活は慣れた?このロフトの事以外の。」


アヤ『そーねー。もう全然慣れた。昔から住んでるんじゃないかってくらいに。』


こうた「まぁ、適応力かなり高そうだからね〜、あなたは。」


アヤ『まーねー、ってそれ褒め言葉?』

アヤ『ただ、暑いのはなぁ、まだ慣れてないって言うか、北国育ちなので。』


こうた「へ〜、北国育ちなんだ。」

こうた「俺、転勤多いからさ、そろそろ北国にも転勤になるかと思ってたら、真逆の南国の地だからな〜。」


アヤ『じゃあ、次は北国かもねっ。』


こうた「うちの会社、全国あちこちに支店あるから、次どこかは言われるまでわかんないかな。」


アヤ『でも、まだ引越しできたばかりだから

しばらくはここだねっ。』


こうた「だいたい2年サイクルかな。」


アヤ『じゃあ彼女できてもすぐに遠距離恋愛になっちゃうんだ。』


こうた「そうだねー。数年前にその時付き合ってた彼女とは、遠距離でうまくいかなくて別れた。」


アヤ『へ〜、悲しい過去ね。』


こうた「そんなに重たい話でもないとおもうんだけど。」


アヤ『悲しい話ね。はやく立ちなおれるよう、応援するよ!だから頑張って!』


こうた「あのね〜、そんなテンションの話じゃないんだけど。結構前の話だし。」

こうた「勝手に悲しい話にするなっ!」


アヤ『あっ、ごめん、ごめん。つい。』

アヤ『悲しい男かと思って〜』


こうた「あのさー、俺ってどういう風に見られてるわけ?」


アヤ『だから、見えないって!』

アヤ『よしっ、今からお祭りの話っ!』

アヤ『一番好きな食べ物、せーので、じゃあいくよっ、せーのっ!』


こうた「チョコバナナ。」

アヤ『りんご飴っ!』


こうた「りんご飴?好きなんだぁ。」


アヤ『チョコバナナって、子供かっ!』


こうた「お互い様だろ!他になんかなかったわけ?たこ焼きとか、なんか。」


アヤ『だって〜』

アヤ『好きなんだもん!りんご飴。だこ焼きも、わたあめも、お好み焼きも、クレープにポテトに〜、えーっとぉ…』


こうた「もしや、全部言おうとしてないか?」


アヤ『食べたい物言ってっただけだし。」


こうた「お祭りでそんな食うの?」


アヤ『そんな食べれないしっ!』

アヤ『何食べよ〜かなぁ?なんか楽しみになってきたー。ねっ!』


こうた「俺まだ行くかわかんないし。」

こうた「まっ、行けたらって感じかな。」


アヤ『大丈夫よ〜、もし行けないんだったらチョコバナナ買ってきてあげるからー。』


こうた「だから俺たち会ったりとかしないじゃん。」


アヤ『冷蔵庫があるじゃない!』


こうた「ほう、そういう時はなかなか便利かもしれないな。このシステム。」


アヤ『でしょー。ナイス私っ!』

アヤ『ナイスシェア!』


こうた「なんか、そういうとこ頭まわるタイプだよねー。」


アヤ『素直に褒めてくれてもよくないっ。』


こうた「褒め言葉のつもり。」


アヤ『じゃあ、よしとするか。』

アヤ『楽しみになったらなんか眠くなってきちゃったぁ〜。』


こうた「寝ますか。そんじゃ。」


アヤ『おやすみなさ〜い!』


こうた「おやすみなさい。」


シェアすることにも慣れてきた2人。

恋愛とかじゃなく、ルームメイト的な感じで気楽な関係なんだろう。 

いつ終わる?なんて事も深く考えずに。


第4話に続く









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