第11話 ロフトの上から

3月も中旬すぎれば春の陽気が。

通勤時間には心地よい風が。

あれからもうすぐ1年。

この街に来てから。

もう見慣れたこの街はよその街ではなく、まぎれもなく自分の街になっていた。


ユウコ「あっ、おはよー!」

こうた「お〜、おはよう。」

ユウコ「初めてねっ。朝に近所で会うの。」

こうた「そうかも。」

ユウコ「今日は早いのねっ。雨とか〜、」

こうた「降りませんっ!」

ユウコ「でも珍しい。」

こうた「早く目が覚めて。」

ユウコ「いい事でしょっ!じゃっ、いきますかー、会社に。」

こうた「おーし、今日も頑張るかー。」


会社までの道のりも慣れたもので。

今日は最近の中でも気温が高い。

昼にはきっと暑くなるだろう。

きっと暑い1日に。


支店長「おっ、おはよー!」

こうた「おはようございます。」

ユウコ「おはようございます。」

支店長「珍しいなー、2人一緒か。」

ユウコ「まっ、近所なんで。」

支店長「そっかー。」


プルルー


主任「支店長お電話です。」

主任「北エリアのブロック長です。」

支店長「お電話かわりました。あっ、おはようございます。えっ、はい。おりますが、はい、はい、承知致しました。」

主任「なにかトラブルでも?」

支店長「こうたくん。」

こうた「はい。」

支店長「希望、叶いそうだがまだ来て1年だし、もし次回っていうなら断るが。」

こうた「それって転勤ですかっ?」

支店長「欠員がでて、もとから人が足りないらしく、急だけど来週から来れたらって話なんだが、どうする?」

こうた「今までで一番急な話でびっくりしてます。行くにしても部屋決めたりもあるし、とにかく急なので…。」

支店長「部屋は問題ないぞ。さっきちらっと言ったんだが、ワンルームか、ロフトの部屋なら不動産屋が提携してるから、ネットで見てよければすぐ用意できるらしい。」

こうた「返事はいつまでに出せば?」

支店長「明日の朝までに答えがきければ。」

こうた「わかりました。明日までには。」


突然の転勤の話。

希望は出したがあまりにも急すぎて。

朝はこの街にまだ住むんだらうと考えていたばかり。

慣れたこの街も結構好きだ。

本当に悩む。

1日中考えてるがわからない。


ユウコ「なーに、悩んでるの?」

こうた「そりゃねー。」

ユウコ「まっ、タイミングがねっ。」

こうた「急だし。」

ユウコ「確かに。」

こうた「じゃあ、また明日〜。」

ユウコ「悩めー!とことん。じゃあ。」


ガチャ

この部屋気に入ってるし。

そんな事を考えていた。


ピンポーン


こうた「あっ、はーい。」


ガチャ


ユウコ「おっす!」

こうた「えっ!どうしたの?それになんで家わかったの?」

ユウコ「悩んでる君に更に難しい話もってきたり、もってこなかったりっ。」

こうた「えっ?まっ、どうぞっ。」

ユウコ「ピザ頼むかっ!」

こうた「割り勘なっ!」

ユウコ「ケチッ!」

こうた「ここは俺の家だっ!」

ユウコ「そーでした。」

こうた「でっ、どうしたの?急に。」

ユウコ「いや、今話さないとダメかと。」

こうた「なんの話?」

ユウコ「恋ばなっ!」

こうた「誰の?」

ユウコ「あなたの。」

こうた「えっ?どんな?」

ユウコ「私も半信半疑って感じだったけど、さっきあなたの転勤の話出て、支店長に言われてあなたの書類探して、あなたの住所みてびっくりっ!」

こうた「俺の住所がどーしたの?」

ユウコ「あなたの気になる人?の話。」

こうた「えっ?それは話せば長くなるし、信じられない話だから。」

ユウコ「知ってるの。私。っていうか、やっと話が繋がった。」

こうた「どーいう事??」

ユウコ「ロフトでしょ?あなたの話。」

こうた「えっ!!!」

ユウコ「アヤちゃん。」

こうた「えっ!?」

ユウコ「私のジムの友達。」

こうた「あっ!聞いてる。ジムに仲良くしてる友達がいるって。」

ユウコ「それが私。」

こうた「じゃあアヤちゃんが帰る前に話したっていうのもっ?」

ユウコ「そう。私。」

ユウコ「私アヤちゃん好きだし、アヤちゃん嘘とかつかないタイプだから。」

こうた「それで信じたの?」

ユウコ「アヤちゃんの言う事は信じた。けどやっぱり半信半疑って感じで。でも、こうたくんの住所見て繋がった。」

こうた「なぜ?住所で?」

ユウコ「あなたが北に希望だしたのと、あなたが気に入った人がいるって言ってたのとか。」

こうた「それだけ?」

ユウコ「アヤちゃんの話思い出して、りんご飴の事とか、あなた買ったんでしょ。ケーキも。あれ一人じゃ食べれないよね。」

ユウコ「そういうの全部。なんかいっきに繋がって。」

こうた「ああ。全部ホント。」

ユウコ「じゃあこの冷蔵庫が?」

こうた「そう。この前までは。」

ユウコ「でも、ひとつだけあなたは知らないはずよ。」

こうた「えっ!?」

ユウコ「私の考えは間違いないはずっ。」

こうた「なにがっ?」

ユウコ「おどろかないでよ。」

こうた「いやっ、その感じ、多分おどろくと思うよ。俺。」

ユウコ「アヤちゃん帰ったのは?」

こうた「先週だけど。」

ユウコ「そうよっ!ただ、」

ユウコ「去年のねっ。」

こうた「えっ!!」

ユウコ「私がこの話聞いたのは去年なの。」

ユウコ「あなたが来る前ここに住んでたのってアヤちゃんなの。何回か遊びに来たことあるし。ここに。」

こうた「でも、先週話したよっ!」

ユウコ「多分同じ部屋でも1年の時を超えてあなたと繋がってたのね。」

ユウコ「あなたが話してたのは1年前のアヤちゃんって事。」

こうた「そんなはずっ…。」

ユウコ「でもそうなのよ。」

ユウコ「今でもたまに連絡とってるけど、アヤちゃんがいたのは1年前。」

こうた「でも、アヤちゃん、現実に生きてる人なんだっ!それだけでうれしい。」

ユウコ「元気よ。あなたには最近の事でもアヤちゃんには1年前の事なの。」

ユウコ「でもね。あなたを想う気持ち変わらないわよ。今でもあなたを待ってる。」

こうた「俺、行くっ!」

ユウコ「そうこなくっちゃっ!」

ユウコ「私、アヤちゃん好きだから話聞いた時、私に任せてって意味わかんない事言ったけど、これで約束果たしたわよっ!」

こうた「ところで、任せてって言った根拠ってなに?」

ユウコ「とくにない。その場の勢い。」

こうた「さすがユウコさん。」

ユウコ「それ。どーいう意味かしらっ。」

こうた「感謝してますっ!」

ユウコ「ピザおごりねー。」

こうた「それは割り勘で!」

ユウコ「ケチッ!」

ユウコ「もっと早くわかってれば、アヤちゃんこっちに旅行これたのにっ。」

こうた「でも、わかってよかった。」

ユウコ「アヤちゃんは同じ時を過ごしてるわけじゃない事、薄々気づいてるわよ。」 

ユウコ「お祭り、花火大会の日、年越し違ったらしい。」

こうた「えっ、そーなの?」

ユウコ「ちなみにアヤちゃんと花火行ったのは私。んで。あなたと花火見たのも私。」

こうた「おー、すごい偶然。」

ユウコ「私はキューピットねっ!」

こうた「それは否定しない。」

ユウコ「でしょー!」


バタバタの引越しも慣れている。

この街には1年。

すごく好きな街になった。


ユウコ「アヤちゃんにあなたの乗る便とあなたの服装メールしといた。写メは楽しみなくなるから嫌だって!」

ユウコ「あっ、アヤちゃんもうすぐ誕生日だねー。」

こうた「そーそー。1歳下。」

ユウコ「バカね〜、私たちと同じ歳よ!」

こうた「そういやそーか。」


ユウコ「次は2人で来てね。待ってる。」


こうた「色々ありがとう。じゃっ!」


飛行機から見えるあの先に。 

今までの不思議が現実に変わる時。

声だけしか知らない大切な人。


トントン


「すみません、もしかして…、」


こうた「もしかして、アヤちゃん?」


長めの髪に澄んだ瞳の綺麗な人


アヤ「こうたくん?」

アヤ「久しぶり、そしてはじめまして!」


こうた「あの日の約束。」


アヤ「…うん!」


こうた「やっと…」

アヤ「…会えたね。」


今日もロフトの上から


アヤ「こうたくーん!」

こうた「あっ、今上行くわっ。」


         完


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