ロフトの上のルームシェア

オッケーいなお

第1話 ロフトの上から

転勤が多い会社に勤めて7年。

高校を卒業し上京してから4回の転勤で北から南へあちらこちら。

慣れては新しい環境へ。

もう引越しも慣れたものだ。

独身、彼女なしなのでどこに行っても一人で住むだけなので、今までほとんどワンルームでオッケーだった。

今回見つけた物件はたまたまロフトで初めてのロフト生活。

引越しが終わり荷物を出していく。

「これがロフトかぁ〜」

ロフト部分は四畳とまあまあ広い。

壁に小さな収納もある。

間口は高さ30cm、幅は50cmくらいの小さな収納は左右から開けれる引き戸で、中も広くはない。

まあ、寝る前に読む本などをしまう程度だがないよりはいい。

この部屋のいいところは、冷蔵庫がもともと付いているところだ。

大きくはないが2段の単身用で、付いてるだけありがたい。

独身の引越しであまり物もないので、あっという間に荷物も出し終わる。

この部屋は201で、アパートにはあと3部屋あるが、斜め下が空き部屋で横の202と下の101に挨拶に行く。

下の101は若い女の子で、202は中々マッチョなおじさんが住んでいた。

まだ4月なのに南の地域のこの部屋は猛暑というくらい暑い。

エアコンをつけてみる。

引越し初日、片付けなどしてると時計の針はもう23時をまわっている。

「寝るかー」

早速ロフトへ。

布団をひいて横になる。

慣れない天井との距離。

慣れない空間。

隣や下の階の物音ひとつしない、しっかり防音がされているいい部屋なのだ。


っとその時だった。


『あ〜、寝るかー』


ん!?

なんだ?

隣か?

いや、女の声だし下だな。


『明日は〜、6時半でー、セット完了!』


ん???

上から?

いや。まさかなぁ。


『ラララ♪』

『イェーイ♪』


‥ちょっとうるさいなぁ。注意したほうが、いいのかなぁ。


ハッハッ、ハックション!!

考えながらくしゃみが。


『お大事に〜!』

『な〜んちゃって、聞こえるわけないか!』


‥聞こえてるし。うるさいくらいに。

一応謝っておくか。


男「すいません。くしゃみが大きくて聞こえちゃいましたよね。」


女『えー!!』

女『こっちこそごめんなさい。私うるさかったかなぁ。』

女『ホントごめんなさい。』


男「こちらこそ。でも結構声聞こえるんですね、下の階から。」


女『下の階って?えっ、お隣のお兄さんじゃないんですかー!?』


男「いいえ。201ですよ。」


女『え〜!!』

女『なに冗談言ってるんですかぁ〜、私が201ですよ。ってお隣さんですよねー!?』


男「‥なんか変じゃないですか?」

男「僕の声どこから聞こえます??」


女『あっ!!』

女『えっ!?上???』

女『えっ。変態、ですかっ!?』


男「あのっ!!」

男「変態とかじゃないんでっ!!」

男「僕もあなたの声上から聞こえるんですよね、なんか変だけど。それに僕は今日引越してきたばかりだけど、201で間違いないです。絶対に。」


女『えっ!、意味わかんないんだけど!』

女『私も今日引越してきたばかりだけど201で間違いないはずよ。』

女『えっ!?幽霊?とか?』


男「こっちからしてみても、君が幽霊かと思うよ。同じ部屋に住んでるわけないし、君の姿見えないし、でも会話成り立ってるし。」

男「一応聞くけど隣ってマッチョなおじさん?っていうか、お兄さん?」


女『そう。あなたがマッチョさんだと思ってた。っていうか、マッチョさん?』


男「おれは痩せてるし、そのマッチョさんはさっき挨拶してきた」


女『私もさっき挨拶してきたし。っていうかあなた誰?』


男「だから〜、んー、201の住人で名前はこうた、って自己紹介していいのかぁ?」


女『201ってのは信じてないけど、私はアヤですけどー、なんか変な感じ。』

女『っていうか、どこの誰〜、って今聞いたけど、やっぱ意味わかんな〜い!!』


男「なんかよくわかんないけど、ホントに201ならロフトの収納何色?たしか不動産屋がロフトの収納、部屋ごとに色違うんだって言ってた。色はあまり気に入らなかったけど。俺は。」


女『エメラルドグリーン。かわいい色よっ!』


男「かわいいか?まぁエメラルドグリーンはいいとして、なんで引き戸の取手だけ黄色なんだ。それが気に入らん。」


女『かわいいじゃないっ!なんか植物っぽくてさぁー、って!なんでわかるのっ!?』


男「俺が聞きたいわっ!」

男「ただひとつわかったのは君も俺も一緒にはいないけど多分同じ部屋?にいるって事。非現実的でよくわからないけど、異世界?パラレルワールドみたいな?」


女『まっさかぁ〜』


男「じゃあこれをどう説明する?』


女『なんか、よくわかんないけどさぁ、声聞こえるだけだし〜、いいんじゃない?深く考えなくてさぁ。』

女『明日には聞こえないようになってるかもしれないしさっ!』


男「えっ?そんなあっさりでいいの?」


女『別になんか見えたり。見られたりじゃないしさぁ〜』

女『もー考えるの終わり〜!』

女『でっ。片付いたの?そっちは?』


男「えっ?も〜そんなノリ?」


女『まぁ、変っていえば、変だけどぉ、一応同じ201の住人って事で!って今日だけのつながりかもだけどぉ、あっ、この部屋冷蔵庫付いてるのはありがたいよねー』


男「冷蔵庫はありがたいけど、ってそれ知ってるって事はやっぱ同じなんだよなぁ。」

男「不思議だけど、まぁ声だけだし…」


女『そうそう。あんまり気にしない!』

女『あっ、ちょっと待っててー』


男「待っててもなにもさぁ、見えてないっつーのに」


女『お待たせ〜』

パシュッ

女『ップァ〜、冷たくておいしい〜』


男「えっ!飲み物取りに行っただけ?』


女『そーそー、4月なのに暑いじゃない?で、冷蔵庫になんとっ!冷たいコーラが!』

女『いつのまに入れたんだろう?私ってチョー天才!』


男「じゃあ、俺も!」


女『俺もって?あっ、なんか飲み物取りに行ったんでしょ〜?』


男「あれ〜??俺夕方買ってきたコーラ冷蔵庫に入れたはずなんだけど、間違ってどっかにしまったのかなぁ?」


女『このコーラだったりしてぇ〜!なぁーんちゃってぇ〜』

女『でもあるかもねー、そーいうの。』


男「あるわけないじゃん!あぁ俺のコーラ‥」

男「ゼロカロリーのぉ…」


女『あっ、ごめーん。私飲んでるのゼロカロリーのやつ〜』

女『偶然って続くのねー。不思議よねぇ。』

女『あー不思議。あーおいしい。』


男「別にいいし。明日買うから。」

男「ねぇ、この不思議な会話いつまで続くんですか?」


女『そーねー、コーラも飲んだし、明日からまた仕事だぁー。寝ますか?』

女『なんか突然でびっくりしたけど、それなりに楽しかったよぉー。』


男「俺はまだ不思議だけど、楽しいって言っていいかわかんないけど、楽しかった。のかぁ?じゃあ、短い間でしたがどーもって事で。」

男「じゃあ元気で。」


女『そっちも元気でねー!』

女『またねー』


男「またねー、ではない。」


女『あっ、そーだった。』

女『じゃあ元気でっ!』


男「それじゃあ…」


…シーン


‥俺、なんか精神的に疲れてるのかなー?


第2話に続く





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る