第2話 冷蔵庫から

…あ〜、全然寝れなかったぁ〜。


昨夜の事は夢なのか、妄想なのか、考えていたらいつの間にか朝に。

引越して初めての朝。

適当にパンを食べて会社に行く準備。

寝不足で体が重い。

冷蔵庫に牛乳をしまう時、


…あっ、そーいえばコーラ‥

…また帰りに買うか〜、どこにしまったか?


そんな事を考えながらも、初出社なので早めに家を出る。

アパートからは駅まで徒歩5分。

電車で2駅が会社からの最寄り駅。

駅を降りて徒歩5分にある雑居ビルの3階に会社がある。


「おはようございます!」


張り切って入ったが、ここの支店は都会からは離れていて、人数も自分を合わせて5人とすぐに馴染めそうな感じだ。

やる仕事は今までと変わらないので、普通に仕事をこなす。

定時に仕事も終わり、今日は歓迎会なるものをやってくれるらしい。

50代くらいの支店長、30代の主任、事務の50代のおばちゃんと、事務の唯一歳が近い20代の女性、アットホームな環境でもう馴染んでいる。

月曜日という事もあり20時には解散。

30分もあれば家に着く。


ガチャッ


まだ慣れないこの部屋だが、ロフトのある部屋の風景は新鮮だ。

シャワーを浴びて、テレビを見たりでダラダラ過ごすのも独り身の特権。


‥あっ、忘れないうちに。


今日はコーラではなく、無糖の炭酸を買ってきたので2本冷蔵庫に入れておく。

なんせ暑い環境なので、2本は必要と思い、昨日の事もあるので確認もする。


「よしっ!」


確認完了。

今日は間違いなく入れたので、後で飲みたくなっても大丈夫。

そんな安心の中寝る用意をしてロフトへ。

昨日の事を考えても、やっぱり非現実すぎるので深く考えるのはやめた。

多分、疲れてたのだろう。

半分自分に言い聞かせるように。


『ランランラン♪』

『イェーイ♪』


…はっ!!!


確かに聞こえた。

昨日の声だ!


こうた「あ〜、あのー、聞こえて…」


アヤ『あーっ!!』

アヤ『なにこれ〜、また聞こえたっ!』


こうた「もーわからん!なんだ?これっ!」


アヤ『なに〜、夢じゃなかったんだぁ。』

アヤ『ヤッホー!!』


こうた「あのさぁ、君は不思議に思わないのかい?この尋常じゃない事について…」


アヤ『昨日のは夢かって思ったけど、今は眠くないし、夢じゃないし。まっ、結果声だけだしさぁ。』

アヤ『いいじゃん。気にしなくて〜。』


こうた「ホント君は簡単に言うよな。」

こうた「これさっ、ヤバイよ、マジで!俺なんか精神的にやばい気がしてるし。』


アヤ『気にしすぎだよ〜。』

アヤ『そんな事より、ちょっとタイム!』


こうた「これもデジャブ。あれでしょ、飲み物取りに行くやつ…あっ!!」


プシュッ

アヤ『ップァ〜、って、味しなっ!炭酸すごくキツ、なにこれ〜。』


こうた「大変だっ!!!」

こうた「飲みも1本なくなってるー!!」


アヤ『あっ、だって多分私飲んでるもん!』


こうた「おいっ!この異変に君は驚いたりとかないのかっ!」

こうた「1本なくなってるんだぞっ!」


アヤ『まぁーまぁー落ち着きなって!』

アヤ『冷蔵庫の飲み物、1番上でしょ。その横見てきなよ。』


こうた「…」


こうた「おいっ!なんか入れた覚えのないシュークリーム入ってるぞー!!!」


アヤ『あっ、飲み物のお礼ねっ!』

アヤ『夢じゃなかったから昨日もコーラもらってるしさっ!』


こうた「いやっ、だから、俺の冷蔵庫から君の冷蔵庫に…だから、つまり…」


アヤ『落ち着きなってばっ!シュークリームあげたんだし〜』


こうた「シュークリームがどうとか、そんな話じゃなくてさぁ…」


アヤ『だからさぁ〜、つながってるんじゃない?あなたの冷蔵庫と、私の冷蔵庫の上の段がさー』

アヤ『私、コーラとか普段買わないの。昨日のが夢じゃないってわかって、もしやと思って冷蔵庫見たら、入ってるじゃない。上の段にだけ私の知らないものが。』


こうた「つながってるってこと?冷蔵庫の上の段だけ。」


アヤ『そうみたいね。』

アヤ『でも他の段はつながってる様子はないみたいね。』


こうた「なんで君はそんなに冷静なの?」


アヤ『先に気づいて、そんでもって先にもらったもん勝ちよ。』

アヤ『でも、やさしい私はシュークリームをあげたのっ!』


こうた「シュークリームがとかはさぁ…」


アヤ『文句あるなら返してっ!』


こうた「あっ、ごちそうさまです…」


アヤ『よろし〜。』

アヤ『これでひとつ謎がとけたし。』


コウタ「いゃ〜、謎とけてないし。」

コウタ「意味わかんないもん。」


アヤ『まっ、深く考えないでうまくやりましょうよっ!お互い!』


こうた「う〜ん。なんかわかったと言い切れないけど、考えてもわからないし〜。」


アヤ『まっ。そういうことっ。』

アヤ『じゃあ、質問いい?』


こうた「あー、答えれることなら。」


アヤ『今何歳?』


こうた「えっ?25歳。今年26歳。」


アヤ『じゃあ私の1歳上だ。』

アヤ『次の質問!』


こうた「あっ、はいっ。」


アヤ『彼女はいる?』


こうた「いいえ。」


アヤ『あっ、この質問は、彼女とかいたらそっちの声聞こえるの気まずいじゃない?だから聞いといた。深い意味はないので。』

アヤ『私も彼氏いないのでご安心を。』


こうた「いや、君に彼氏がいてもこれといって俺に関係ないし。」


アヤ『そーいう意味じゃなくて。嫌じゃない、私が彼氏いて、彼氏とエッチな事してるのとか聞こえるのとか。』


こうた「ほう、それはそうだな。」

こうた「っていきなり下ネタかよっ!」


アヤ『例えよ、例え!』

アヤ『だって、どのタイミングでつながってるのかわかんないじゃない?』


こうた「そういえば、そうだな。」


アヤ『次の質問。』


こうた「聞きたい放題だな。」


アヤ『今日のところは次で最後よ。』

アヤ『休みは何曜日?私は土日。』


コウタ「俺は日曜と、土曜は隔週。」

コウタ「休み聞く意味は?」


アヤ『この先いつまでつながってるかわからないじゃない?つまり、ある意味ルームシェアみたいなもんよね。ロフトで、しかも声だけなんだけど。』


こうた「まぁ、謎だらけだけどそう言われればそうだな。」


アヤ『だから、せめて多少のライフスタイルくらいはお互い知っとくべきかと。』

アヤ『あっ、あと〜、エッチなDVDとかはイヤホンしてみて下さい。』


こうた「あのさぁ〜、見ないし、そういう類いのやつは。」


アヤ『えーっ!男の人ってみんな見るのかと思ってたぁー。』


こうた「いや、見る人もいるし、人それぞれだけど、俺は見ない。」


アヤ『まっ、それはいいとして。』

アヤ『こうたくん!』


こうた「な、なんだ!?いきなり名前で呼びだして。」


アヤ『一応ルームシェア?的な感じだし、名前で呼んだほうがいいかと。』

アヤ『私の事も名前で呼ぶように!!』


こうた「え〜。ん〜、じゃ〜、アヤさん。」


アヤ『さん、はないなっ?』

アヤ『ちゃんでっ!はいっ、もう1回。』


こうた「…あやちゃん。」

こうた「ってか、なんの訓練?」


アヤ『一応決め事よっ!』

アヤ『親しき中にも礼儀ありっ!』


こうた「親しくないし。まだ。」


アヤ『まっ、うまくやっていこーよっ!』


こうた「あっ。まぁ、そうだな。」

…これでいいのかなぁ?


こうして謎だらけでよくわからない、ロフトの上でのルームシェア?みたいな奇妙な関係が始まってくのだ。


第3話に続く






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