終わりを告げる瞬間は、どことなく負のイメージがつきまといますが、この作品に限っては瞬く間に前向きな展開で読み手の心を和ませてくれる魅力があります。メインを飾るカップルの付き合い方が独特なところも面白いです。出会いのキャンパスが武蔵野の誇る美術大学だからだろうなぁと、作中における会話の内容や二人の付き合い方を眺めて、色々と妄想を膨らませていく楽しみがあるのも魅力の一つと言えるでしょう。新たに始まろうとしている『武蔵野ライフ』まで期待したくなります☆
武蔵野は、僕たちの関係のように何も変わらない。 この言葉を紡ぎ出すための枠組みが見事だと思います。 当初、いつまでも続く「後輩君」に違和感を感じはしましたが、これが「あなた」に変換するための溜だったことが、トリックのようにも感じられて、面白みもありました。
武蔵野で暮らした主人公の、人生の物語。諦めたものも、手に入れたものもあったけれど、それでも最後には…武蔵野やアトリエ、彼女などの描写がとても美しく描かれています。始まりと終わりと、それを見守ってきた武蔵野。素敵な物語でした。
絵の具にまみれた学生時代。強く美しい彼女の横顔に魅了される。春風が届けてくれるのは、油絵具の匂い。彼女の傍にいることを決意する。――私は後輩くんを応援するよ。武蔵野で始まったもの、そして武蔵野で終わったもの。だからこそ、彼女の笑顔は終わらせたくなかった。こんな人生を送ってみたい。そう思わせてくれる作品だった。
わたしはこの作者さんのファンです。コメディも得意、人間ドラマも描ける、そこに、ほんのり切なく甘い恋愛要素が加わっている。まるで、映画監督ウディ・アレンの作品のような、独特なリズムがあるのです。この「ヒューマンライフ・イン・ムサシノ」は、作者さんの真骨頂でした。五感に訴えてくる描写、ユーモアある言い回し。武蔵野市を知らなくても、主人公たちが生きているその場所を、その思いを、思い浮かべることができます。
夢の終わりは新しい夢の始まりであるし、恋の終わりは新しい愛の始まりでもある。そんな繰り返される人生の道程を、確かな筆致と鮮やかな描写で表現されています。武蔵野の美術大学で始まった主人公とその先輩との恋物語は、やがて共に人生を歩み、次の世代へと辿り着く人生の物語へと変貌していきます。首尾一貫されたテーマの元に進む物語は、とても爽やかな読後感をもたらしてくれました。武蔵野という土地で生きる人の魅力を強く感じる物語です。
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