超能力研究者は、彼女達3人の素質を、くみ取って、他の人がいない離島で
暮らしている。それは、彼女達の力の一つに、相手が思っている事を
読み取ってしまう能力があるからだ。
普通に考えても人は、他人と接するときに、あまり本音を言わない。
そのために、彼女達は幼い頃からの経験によって本音と表の部分の矛盾に
相当、苦労してきたのであろう。人間に対する考えや、社会の複雑性に
理解するには、まだ若すぎたかも知れない。
自分達もそうであれば、結果として彼女達と同じように自分達のテリトリーを、
失えば住む世界が無くなれば、世界を憐れんで見てしまうだろう、そして、
最善の道を選ぶだろう。この物語は彼女達を理解できるか?どうかと言った
ところで、また見方が変わってくると思いました。
優しい文体が醸し出す、ふわふわとした不安定な世界。
その世界に安定をもたらしている3人の少女。
3という数字は安定を意味するマジックナンバー。
鼎立という言葉もあるくらいに。
諸葛孔明は言った。
一国では腐敗する。
二国では対立する。
三国鼎立して、初めて世は安定する。
しかし、鼎立とは完全な安定を意味する言葉ではない。
その中に波乱や不穏さを内包している。
三竦みだからこその安定。
3人が3人でなくなったとき、三位一体が失われたとき、安定していた不安定な世界はどうなるのか。
その目で確かめていただきたい。
優しくも不安になる読後感が好印象の短編。
変化は常に外からやってくる。
超能力は危険だ。
これはもちろん、現実世界での価値観でもって「物理的に危ない」ということではなく、小説で題材として扱う際の危険性の話である。
超能力に限らず、作品に人知を超えた存在を登場させる際はそれが作品にとって必要なのか吟味することが大事だ。でなければ、能力の強大さ故に、作品が転覆する恐れがある。
この作品はどちらかと言うと、能力に押しつぶされかけているかもしれない。
しかしながらこの作品では、世界の滅亡と超能力を題材としているにも関わらず、全体を通して優しい印象を持たせる言葉遣いや、情景描写が多い。
心穏やかになりたいのなら、この作品を読んでみるといいかもしれない。
執筆お疲れ様でした。